なはとは九州旅客鉄道(JR九州)が京都駅 - 熊本駅間を東海道本線・山陽本線・鹿児島本線経由で運行した寝台特急列車であった。
しかし、同じJRでも競合区間である新幹線や完全な競合である航空機や高速バスの影響を直接に被り、さらに車両の老朽化も相俟って利用者が減少し、2008年3月15日のダイヤ改正にともない、2008年3月14日発の運行をもって廃止された。
登場時には昼行特急列車として運行されたが、山陽新幹線博多駅乗り入れに際して関西圏対鹿児島本線沿線を結ぶいわゆる「関西ブルートレイン」の一員となった。そのため、本稿では主に関西圏対鹿児島本線沿線を結ぶ夜行列車についても記載してある。
京阪神対鹿児島本線優等列車沿革
元々「なは」という列車は昼行列車として設定された。下記の「名称の由来」も参照されたい。しかし、山陽新幹線博多駅乗り入れ後は夜行列車の名称として使用されている。そのため、この項目では廃止前の「なは」に繋がるものとして京阪神対鹿児島本線の優等列車についても記載する。
山陽本線優等列車沿革の項目も参照されたい。
戦後直後の展開
寝台電車特急列車と「なは」の登場
583系電車寝台特急「明星」 大阪駅 1978年<昭和53年>撮影
- 1967年(昭和42年)10月1日 寝台急行列車「海星」を昇格する形で、世界初となる電車寝台特急列車「月光」(げっこう)の運行を開始。
- 使用された581系電車は、使用列車から「月光型電車」と呼ばれるようになった。
- 1968年(昭和43年)10月1日 ヨンサントオと呼ばれた大規模ダイヤ改正により、以下の列車の運行開始。
- 夜行急行列車「ひのくに」を電車特急化。寝台電車で運行され、「銀河」と同じ東京駅 - 大阪駅間を運行する寝台急行列車であった「明星」(みょうじょう)の名称を与えられる。
- 「月光」に臨時列車を1往復増発。
- 「あかつき」1往復増発。運行区間は新大阪駅 - 西鹿児島駅・佐世保駅間。
- 従来「かもめ」として新大阪駅 - 西鹿児島駅間を運行されていた昼行気動車特急列車を独立させて運転開始。列車名として沖縄の新聞である琉球新報が公募した愛称案から選ばれた「なは」の名称を与えられる。なお、経緯は下記も参照されたい。
- 名古屋駅 - 博多駅間運行の寝台特急列車「金星」(きんせい)の運行開始。
- 1970年(昭和45年)3月15日 「月光」、「明星」、「金星」の食堂車営業休止。
- 1970年10月1日 「明星」2往復に増発。また、京都駅 - 西鹿児島駅間を東海道本線・山陽本線・鹿児島本線経由で運行する電車寝台特急列車として「きりしま」運行開始。
- 「きりしま」は従来、同名の列車である「霧島」が東京駅 - 西鹿児島駅間の急行列車で運行されていたが、これの名称を「桜島」にしてひらがな表記とした。また新設された当時では電車寝台特急列車では最長距離運転列車であり、食堂車の営業も関西 - 九州間の電車寝台特急の中では唯一営業していた。
- 1972年(昭和47年)3月15日 山陽新幹線岡山駅乗り入れに伴うダイヤ改正により以下の通りとする。
- 「なは」 - 電車化されることなく、「日向」との併結運転を継続。
- 「明星」 - 従来「月光」として運行されていた博多駅発着列車を吸収する。また、1往復を京都駅発着とする。
- 「月光」 - 運行区間を岡山駅 - 西鹿児島駅間とし、岡山駅 - 博多駅間の臨時列車も設ける。
- 「あかつき」に新大阪駅 - 熊本駅・長崎駅間列車を設定。
- 「しろやま」 - 列車名を「屋久島」(やくしま)に変更。
- 1972年10月2日 「あかつき」に新大阪駅 - 熊本駅間列車を設定。「あかつき」に14系客車投入。
- 1973年(昭和48年)10月1日 ダイヤ改正に伴い、以下のように変更する。
- 岡山駅 - 博多駅間の臨時「月光」を定期列車化。「月光」2往復となる。
- 「なは」を485系電車により電車列車化。同区間を運行する昼行特急列車として単独で運転。
- なお、併結相手の「日向」は気動車特急のまま残り、日豊本線電化が南宮崎駅まで延伸された翌1974年4月に電車化。
- 「きりしま」が上りのみ西鹿児島→新大阪駅間の変則運転となる。また、運転ダイヤの関係で「きりしま」の食堂車営業休止。
山陽新幹線全通後の展開
- 1975年(昭和50年)3月10日 山陽新幹線博多駅乗り入れに伴うダイヤ整理を実施。以下の通りとなる。
- 「なは」 - 昼行特急列車から、寝台特急列車の名称へ変更。寝台電車により、新大阪駅 - 西鹿児島駅間の運行とし、京阪神対鹿児島本線寝台列車=「明星」となっている中で名称上1往復存置される形となる。
- 「明星」 - 従来「あかつき」・「きりしま」として運行された西鹿児島駅・熊本駅発着列車を吸収。改正前は電車のみの愛称だったが、電車3往復、客車4往復の計7往復に。また、1往復のみ特急「かもめ」の廃止及び急行「天草」の経路変更を補う形で走行線区のうち黒崎駅 - 原田駅間に関しては筑豊本線経由となり、博多駅は通らないダイヤとなった。
- 「月光」 - 岡山駅発着であったことから廃止。
- 「屋久島」 - 運行自体を廃止。
- 「天草」 - 列車名を「阿蘇」(あそ)に変更。運行区間を博多駅経由の新大阪駅 - 熊本駅間とし、14系客車を使用する。
- 「桜島」 - 東京 - 新大阪駅間を廃止。新大阪 - 西鹿児島駅間は「明星」の季節列車として14系座席客車で運転。
- 1978年(昭和53年)10月2日 このときのダイヤ改正に伴い、以下のように変更する。
- 「なは」 - 京都駅発着に変更。
- 「明星」 - ダイヤ整理により博多駅・熊本駅発着列車各1往復、西鹿児島駅発着を2往復の4往復体制となり、14系座席客車の季節列車も廃止される。
- 「阿蘇」 - 「くにさき」と併結運転開始。
- 1980年(昭和55年)10月1日 このときのダイヤ改正に伴い以下のように変更する。
- 「なは」 - 新大阪駅発着に変更。
- 「明星」 - 熊本駅発着列車を廃止。
- 「阿蘇」 - 廃止。
- 1982年(昭和57年)11月15日 ダイヤ改正に伴い、以下のように変更される。
- 「明星」 - 博多駅発着列車及び西鹿児島駅発着を1往復廃止。これにより「明星」1往復のみとなる。
- これにより電車列車=「なは」、客車列車=「明星」となる。
- 「金星」 - 名古屋~博多駅間の電車寝台特急列車として廃止。なお、臨時列車として名古屋駅 - 西鹿児島駅間を14系座席客車による特急列車「金星」が運行された。
- 1984年(昭和59年)2月1日 ダイヤ改正に伴い、以下のように変更される。
- 「なは」 - 寝台客車24系客車に車種変更。
- 「明星」 - 「あかつき」と併結運転開始。
- 1986年(昭和61年)11月1日 このときのダイヤ改正により、京阪神地区から鹿児島本線方面へ向かう列車群については以下のように変更する。
- 「なは」の受け持ちを向日町運転所(現・京都総合運転所)から鹿児島運転所(基本編成)、熊本運転所(付属編成)へ変更。
- 「明星」が20系客車による臨時列車に格下げ。定期列車としては「なは」のみとなる。
JR化以降の展開
- 1990年(平成2年)3月10日 「なは」に普通車座席指定席として「レガートシート」を熊本駅発着の付属編成に連結開始。
- また、同年より新大阪駅 - 西鹿児島駅間に臨時急行「霧島」運行開始。これは臨時寝台特急「明星(81・82)号」として運行されていた列車であったが、使用車両が20系客車であったため、車両の陳腐化・経年化それに伴うサービスの低下により格下げされたものである。
- 1991年(平成3年)3月29日 「なは」、この日の上り始発よりB個室寝台「デュエット」を連結開始。
- 1992年(平成4年)7月14日 「なは」、この日の上り始発よりB個室寝台「ソロ」を連結開始し、付属編成に連結していた「レガートシート」を西鹿児島発着の基本編成へ移動。
- 1993年(平成5年)3月18日 臨時夜行座席特急「金星」が利用者減により、事実上の廃止となる。
- 1995年(平成7年)4月20日 新大阪駅 - 西鹿児島駅間運行の臨時急行の名称を「霧島」から「桜島」に変更。
- これは、JR九州が同年から運行開始した日豊本線宮崎駅 - 西鹿児島駅間の電車エル特急「きりしま」の運行開始に伴う措置。
- 1996年(平成8年)3月16日 臨時急行「桜島」廃止。なお、この年以降夜行列車の多客時での臨時列車の運行は行われない。また、20系客車が使用された(臨時列車としても)最後の営業列車だった。
- 1997年(平成9年)11月29日 東京駅発着の「はやぶさ」が運行区間を熊本駅までに短縮。西鹿児島駅に乗り入れる唯一の寝台特急となり、「なは」の全区間利用者が増加する。また、「はやぶさ」の熊本 - 西鹿児島間で行われた西日本トラベル担当の車内販売が下り「なは」の熊本 - 西鹿児島間に移行し、紅茶の販売が行われた。
京阪神対九州ブルートレインの終焉
- 2005年(平成17年)10月1日 「彗星」廃止と「なは」の利用者減に伴い「あかつき」と京都~鳥栖間で併結運転を実施。運転区間が京都駅 - 熊本駅となり、普通車指定席「レガートシート」が編成から外された。また「京阪神対九州特急」は事実上1往復のみの運行となる。
- 2008年(平成20年)3月14日 この日発の運転をもって廃止。これによって関西 - 九州間の夜行定期特急列車は1965年に運転開始以来42年半、当列車は39年半の歴史に終止符を打つことになった。また、九州直通ブルートレインは東京発の「富士」・「はやぶさ」の1往復となった。また、関西対九州の夜行列車は臨時列車の「ムーンライト九州」のみとなった。
運行最終日使用車の回送
- 最終列車の車両回送は、以下のような手順で行われた。
- 上り最終列車
- 2008年3月15日定刻に京都駅到着後京都総合運転所へ回送。
- 3月15日の日中から翌16日にかけて「回9301列車」として熊本へ返却回送。
- JR小倉工場へ入場。
- 下り列車
- 熊本着後「回9330列車」としてJR九州小倉工場へ廃車回送。
下り最終「なは」を牽引したED76形70号機も含め、上下列車に使用した車両はいずれも車両の老朽化が著しく、特に客車は外観補修跡が目立っていたことから、同工場にて保留車となったのち解体された。
名称の由来
上の沿革にある通り、沖縄の新聞・琉球新報が沖縄の本土復帰を願い「本土に沖縄名の列車を走らせよう」というキャンペーンで公募したものである。県内外からの5211通の応募をもとに国鉄に提出された5つの候補の中から選出された。
- ちなみに他の候補は「おきなわ」・「しゅり」・「でいご」・「ひめゆり」であった。(2008年1月16日付琉球新報「県民名付け親の寝台特急「なは」 3月廃止に」より)。
そのため、運行開始当初はアメリカ占領下に置かれていた沖縄県那覇市が名称由来の地となる。また経由地・目的地に依拠しない地名を列車名に使う列車でもあるが、鹿児島港で船に乗り継ぐことによって関西方面から沖縄へのアクセスの一端を担っていたという経緯もある。ただし1972年に沖縄が本土復帰してから30年以上経過していること、運転区間が熊本まで短縮されて那覇からはより一層遠くなったことから、名称として「なは」は不適切ではないかという意見も少なからずあった。
国鉄・JRの定期特急列車の中で客車・気動車・電車のすべての動力方式が用いられた愛称はほかに「かもめ」・「はつかり」があるが、夜行列車(しかも客車・電車の両方)まで含めて用いられたのは「なは」のみである。これは上記の愛称制定の事情から、対象となる列車の運用を変更して愛称が使われ続けたことが影響している。
2008年3月15日に下り最終列車が到着した熊本駅でのセレモニーで、鳥栖駅から装着された本列車の単独のヘッドマークがゆかりの地である沖縄県・那覇市の関係者に贈呈された。2008年4月1日より、沖縄都市モノレールの県庁前駅改札内コンコースで展示され、その後沖縄都市モノレール本社に併設されている「ゆいレール展示館」に陳列された。
余談だが、「なは」が「あかつき」と併結運転を行っていたことから、一部の鉄道ファンは両者を合わせて「なはつき」と呼んでいた。
廃止末期時の運行概況
廃止時点では「あかつき」と京都駅~鳥栖駅間を併結運転で運行されていた。なお、列車番号は31・32と運転線区等で変更がなかった。下り=31、上り=32となる。
- 客車編成
客車編成
| 表・編・話・歴・PJR・PJRN |
廃止直前(2008年2月)の「なは」・「あかつき」編成図
列車名・
運行区間 |
「なは」 |
「あかつき」 |
| 熊本駅 - 京都駅間 |
長崎駅 - 京都駅間 |
| 号車 |
|
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
禁煙
・
喫煙 |
○ |
× |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
× |
× |
| 座席種別 |
EG |
B |
B |
B1 |
B2 |
B |
A1 |
B2/B1 |
B1 |
B |
L |
指 |
W |
使用車両
形式 |
カニ24形 |
オハネフ25形 |
オハネ25形 |
スハネ25形
2000番台 |
オハネフ25形
2000番台 |
スハネフ15形 |
オロネ14形
300番台 |
オハネ14形
300番台 |
オハネ15形
350番台 |
スハネフ15形 |
オハ14形
300番台 |
所属
車両区 |
JR九州熊本鉄道事業部熊本車両センター |
JR西日本京都総合運転所 |
|
- 座席種別凡例
- A1=1人用個室A寝台「シングルデラックス」
- B1=1人用個室B寝台「ソロ」
- B2=2人用個室B寝台「デュエット」
- B2/B1=1人用個室B寝台「シングルツイン」・2人用個室B寝台「ツイン」合造車
- B=開放式B寝台
- L=ミニロビー(電話室付)
- 指=普通車座席指定席「レガートシート」(座席車)
- W=普通車座席指定席「レガートシート」女性専用席(座席車)
- EG=電源車
|
- 喫煙・禁煙表記
|
- 牽引機関車
-
- 担当車掌区
-
停車駅
>囲みの駅は下り(熊本行き)のみ、<囲みの駅は上り(京都ゆき)のみ停車。
京都駅 - 新大阪駅 - 大阪駅 - 三ノ宮駅 - 姫路駅 - 岡山駅 - 倉敷駅 - 福山駅 - >尾道駅> - >三原駅> - <新山口駅< - <宇部駅< - <厚狭駅< - 下関駅 - 門司駅 - 小倉駅 - 黒崎駅 - 博多駅 - 鳥栖駅 - 久留米駅 - 大牟田駅 - 熊本駅
当列車と競合した高速バス
関連項目
外部リンク

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