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ギリシャ神話 とは?

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ギリシア神話(ギリシアしんわ、ギリシア語: ΜΥΘΟΛΟΓΊΑ ΕΛΛΗΝΙΚΉ)は、古代ギリシアの諸民族に伝わった神話伝説を中核として、様々な伝承や挿話の要素が組み込まれ累積してできあがった、世界の始まりと、神々そして英雄たちの物語である。古典ギリシア市民の標準教養として、更に古代地中海世界での共通知識として、ギリシア人以外にも広く知れ渡った神話の集成を言う。

出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』


ギリシャ神話はてなダイアリーを別ウィンドウで表示  :  →ギリシア神話

出典: 『はてなダイアリー』


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ウィキペディア(Wikipedia)記事


ギリシア神話(ギリシアしんわ、ギリシア語: ΜΥΘΟΛΟΓΊΑ ΕΛΛΗΝΙΚΉ)は、古代ギリシアの諸民族に伝わった神話伝説を中核として、様々な伝承や挿話の要素が組み込まれ累積してできあがった、世界の始まりと、神々そして英雄たちの物語である。古典ギリシア市民の標準教養として、更に古代地中海世界での共通知識として、ギリシア人以外にも広く知れ渡った神話の集成を言う。

ローマ神話の体系化と発展を促進し、両者のあいだには対応関係が生み出された。またプラトーンを初めとして、古代ギリシアの哲学思想、そしてヘレニズム時代の宗教世界観に影響を与えた。キリスト教の台頭と共に神話の神々への信仰は希薄となり、やがて西欧文明においては、古代人の想像の産物ともされた。しかし、この神話は古代の哲学思想だけでなく、キリスト教神学の成立にも大きな影響を与えており、西欧の精神的な脊柱の一つであった。中世を通じて神話の生命は流れ続け、ルネサンス期、そして近世近代の思想や芸術においても、この神話はインスピレーションの源泉であった[1] [2]

目次

概説

口承

今日、ギリシア神話として知られる神々と英雄たちの物語は、およそ紀元前15世紀頃に遡るその濫觴においては、口承形式でうたわれ伝えられてきた。紀元前9世紀または8世紀頃に属すると考えられるホメーロスの二大叙事詩『イーリアス』と『オデュッセイア』は、この口承形式の神話の頂点に位置する傑作である。当時のヘレネス(古代ギリシア人は、自分たちをこう呼んだ)の世界には、神話としての基本的骨格を備えた物語の原型が存在していた[3] [4] [5]

しかし人々は、この地上世界の至る処に神々精霊が存在し、オリュンポスの雪なす山々や天の彼方に偉大な神格が存在することは知っていたが、それらの神々や精霊がいかなる名前を持ち、いかなる存在者なのかは知らなかった。どのような神が天に、そして大地や森に存在するかを教えたのは吟遊詩人たちであり、詩人は姿の見えない神々に関する知識を人間に解き明かす存在であった。神の霊が詩人の心に宿り、不死なる神々の世界の真実を伝えてくれるのであった[6]。この故に、ホメーロスにおいては、ムーサ女神への祈りの言葉が、朗誦の最初に置かれた[7]

口承から文字記録へ

口承でのみ伝わっていた神話を、文字の形で記録に留め、神々や英雄たちの関係や秩序を、体系的に纏めたのは、ホメーロスより少し時代をくだる紀元前8世紀の詩人ヘーシオドスである[8]。彼が歌った『テオゴニア』においても、その冒頭には、ヘリコーン山に宮敷き居ます詩神(ムーサ)への祈りが入っているが、ヘーシオドスは初めて系統的に神々の系譜と、英雄たちの物語を伝えた。このようにして、彼らの時代、すなわち紀元前9世紀から8世紀頃に、「体系的なギリシア神話」がヘレネスの世界において成立したと考えられる[9]

無論、それは地域ごとで食い違いや差異があり、伝承の系譜ごとで様々なものが未だ渾然として混ざり合っていた状態であるが、しかし、オリュンポスを支配する神々が誰であるのか、代表的な神々の相互関係はどのようなものであるのか、また世界や人間の始源に関し、どのような物語が語られていたのか、それらは、ヘレネスにおいてほぼ共通した了解のある、或るシステムとなって確立したのである。

しかし、個々の神や英雄は具体的にどのようなことを為し、古代ヘレネスの国々にどのような事件が起こり、それはどういう神々や人々・英雄と関連して、どのように展開し、どのような結果となったのか。これらの詳細や細部の説明・描写などは、後世の詩人や物語作者などの想像力が、その詳細を明らかにし、ギリシア神話の壮麗な物語の殿堂を飾ると共に、陰翳に満ちた複雑で精妙な形姿を構成したのだと言える[10]

ギリシア悲劇の作者たちが、ギリシア神話に奥行きを与えると共に、人間的な深みをもたらし、神話をより体系的に、かつ強固な輪郭を持つ世界として築き上げて行った。ヘレニズム期においては、アレクサンドレイア図書館の司書で詩人でもあったカルリマコス[11]が膨大な記録を編集して神話を敷衍し、また同じく同図書館の司書であったロードスのアポローニオスなどが新しい構想で神話物語を描いた。ローマ帝政期に入って後も、ギリシア神話に対する創造的創作は継続して行き、紀元1世紀の詩人オウィディウス・ナーソの『変身物語』が新しい物語を生み出しあるいは再構成し、パウサーニアースの歴史的地理的記録やアプレイウスの作品などがギリシア神話に更に詳細を加えていった。

体系的記述

ギリシア神話を体系的に記述する試みは、既に述べた通り紀元前8世紀のヘーシオドスの『テオゴニア(神統記)』が嚆矢である。ホメーロスの叙事詩などでは、すでに聴衆にとっては既知のものとして、詳細が説明されることなく言及されている神々や、古代の逸話などを、ヘーシオドスは系統的に記述した。『テオゴニア』において神々の系譜を述べ、『仕事と日々』において人間の起源を記し、そして現在は断片でしか残っていない『女傑伝』において英雄たちの誕生を語った。

このような試みは、紀元前6世紀から5世紀頃のアルゴスのアクーシラーオスやレーロスのペレキューデースなどの記述にも存在し、現在はすでに湮滅して僅かな断片しか残っていない彼らの「系統誌」は、古代ギリシアの詩人や劇作家、あるいはローマ時代の物語作家などに大きな影響を与えた[12]

古代におけるもっとも体系的なギリシア神話の記述は、紀元1世紀頃と考えられるアポロドーロスの筆になる『ビブリオテーケ(3巻16章+摘要7章)』である。この体系的系統本は、紀元前5世紀以前の古典ギリシアの筆者の文献等を元にギリシア神話が纏められており、オウィディウスなどに見られる、ヘレニズム化した甘美な趣もある神話とは、まったく異質で荒々しく古雅な神話系譜を記述していることが特徴である[13]

神話の資料

文献資料と著者

古代ギリシアには文字がなかった訳ではない。ミュケーナイ時代にすでに線文字Bが存在していた。暗黒時代にあってこの文字の記憶は失われた。しかし紀元前8世紀頃より、フェニキア文字を元に古代ギリシア文字が展開し生まれる[14] [15]。ギリシア神話はこの文字で記録された。また後にはローマの詩人・文学者がラテン語によってギリシア神話を記述した。

  • 古代ギリシア詩
  • 系譜学者たち(紀元前6世紀 - 紀元前5世紀頃)
    • アルゴスのアクーシラーオス [著作は湮滅]
    • レーロスのペレキューデース[16] [著作は湮滅]
  • 古典劇作家詩人
  • 古典悲劇詩人
    • アイスキュロス Αισχυλος (紀元前525年頃 - 紀元前456年): 『ペルシア人』『縛られたプロメーテウス』『テーベに向かう七人』『オレステイアー三部作』。
    • ソポクレース Σοφοκλης (紀元前496年頃 - 紀元前406年): 『アイアス』『アンティゴネー』『オイディプス王』『エレクトラ』『コロノスのオイディプス』
    • エウリーピデース Ευριπιδης (紀元前480年頃 - 紀元前406年): 『メデイア』『ヒッポリュトス』『アンドロマケー』『トロイエの女』『ヘカベー』『バッコスに憑かれた女たち』『イオン』『オレステース』。
  • 古典喜劇詩人
    • アリストパネース Αριστοφανης (紀元前448年頃 - 紀元前380年): 『アカルナイの人々』『騎士』『蜂』『鳥』『女の平和』『蛙』『ウンモフ』
  • 歴史学者
    • ヘーロドトス Ἡρόδοτος (紀元前485年頃 - 紀元前420年頃): 歴史学者 『歴史』(全9巻)
  • ヘレニズム期
  • ローマ帝政期
    • アポロドーロス Απολλοδωρος (紀元1世紀頃): 『ビブリオテーケー(系統譜・ギリシア神話)』
    • オウィディウス・ナーソ Publius Ovidius Naso (紀元前43年 - 紀元17年): 『変身物語(Metamorphoses)』『祭暦(Fasti)』
    • アプレイウス Lucius Apuleius (紀元124年頃 - 180年頃): 『黄金の驢馬(Metamorphoses)』-『愛と心の物語』
    • パウサーニアース Παυσανιας (紀元2世紀): 『ギリシア案内記』
    • アントーニーヌス・リーベラーリス Antoninus Liberalis (紀元2世紀/3世紀?): 『変身物語集』(Metamorphooseoon Synagoogee)

考古学的資料

ギリシア神話のありようを知るには、近代になって発達した考古学が大きな威力を発揮した。考古学では古代の遺跡が発掘され研究された。

これらの遺跡において、装飾彫刻や彫像、また神々や人物が描かれ彩色された古壺や皿などが見つかった。考古学者神話学者は、彫刻の姿や様式、古壺や皿に描かれた豊富な絵を分析して、これらがギリシア神話で語られる物語の一つの場面や出来事、神や英雄の姿を描いたものと判断した。絵は意味を含んでおり、(学者によって解釈が分かれるとしても)ここより神話の物語を読み取ることが可能であった。

他方、発掘により判明した考古学的知見は、文献に記されていた事象が実際に存在したのか、記述が妥当であったのかを吟味する史料としても重要であった。更に、文献の存在しない時代についての知識を提供した。19世紀末にドイツ人ハインリッヒ・シュリーマンは、アナトリア半島西端のヒッサルリクの丘を発掘し、そこに幾層もの都市遺跡と火災で滅びたと考えられる遺構を発見してこれをトロイア遺跡と断定した。彼はまたギリシア本土でも素人考古学者として発掘を行い、ミュケーナイ文化の遺構を見いだした[17]

20世紀に入って後、アーサー・エヴァンズはより厳密な発掘調査をトロイア遺跡に対し行った。またクレーテー島で見いだされていたクノッソスなど、文明の遺跡の発掘も行われ、ここで彼は三種類の文字(絵文字、線文字A線文字B)を発見した。線文字Bは間もなく、ギリシア本土のピュロスティーリュンスでも使用されていたことが見いだされた。20世紀半ばとなって、マイケル・ヴェントリスジョン・チャドウィックの協力のもと、この文字を解読し、記されているのがギリシア語であることを確認すると共に、内容も明らかにした。それらはホメーロスがうたったトロイア戦争の歴史的な像を復元する意味を持った[18]。また数々の英雄たちの物語のなかには、紀元前15世紀に遡るミュケーナイ文化に起源を持つものがあることも、各地の遺跡の発掘研究を通じて確認された[19] [20]

構成

ギリシア神話は、大きく分けると、三種の物語群に分け得るであろう。

  • 世界の起源
  • 神々の物語
  • 英雄たちの物語

第一の「世界の起源」を物語る神話群は、分量的には短い。それは、後述するように、主に三つの系統が存在する(ヘシオドスが『テオゴニア』で記したのは、主として、この「世界の起源」に関する物語である)。

第二の「神々の物語」は、世界の起源の神話と、その前半において密接な関連を持ち、後半では、英雄たちの物語と絡み合っている。英雄たちの物語で、人間の運命の背後にあって神々の様々な思惑があり、活動が行われ、それが英雄たちの物語にギリシア的な奥行きと躍動を与えている。

第三の「英雄たちの物語」は、分量的にはもっとも大きく、いわゆるギリシア神話として知られる物語や逸話は、大部分がこのカテゴリーに入る。この第三のカテゴリーが膨大な分量を持ち、夥しい登場人物から成るのは、日本における神話の系統的記述ともある意味で言える『古事記』や、それに並行しつつ歴史時代にまで記録が続く『日本書紀』がそうであるように、古代ギリシアの歴史時代における王族や豪族、名家と呼ばれる人々が、自分たちの家系に権威を与えるため、神々や、その子である「半神」としての英雄や、古代の伝説的英雄を祖先として系図作成を試みたからだとも言える[21]

神話的英雄や伝説的な王などは、膨大な数の子孫を持っていることがあり、樹木の枝状に子孫の数が増えて行く例は珍しいことではない。末端の子孫となると、ほとんど具体的エピソードがなく、単なる名前の羅列になっていることも少なくない[22]

しかし、このように由来不明な多数の名前と人物の羅列があるので、歴史時代のギリシアにおける多少とも名前のある家柄の市民は、自分は神話に記載されている誰それの子孫であると主張できたとも言える。ウェルギリウスの『アイネーイス』が、ローマ人の先祖をトロイエー戦争にまで遡らせているのは明らかに神話的系譜の捏造であるが、これもまた、広義にはギリシア神話だとも言える(正確には、ギリシア神話に接続させ、分岐させた「ローマ神話」である)。ウェルギリウスは、ギリシア人自身が、古代より行って来たことを、紀元前1世紀後半に、ラテン語で行ったのである。

神話1:世界の始まり

古代ギリシア人は世界の始まりについて、他の民族と同様、それは原初の時代より存在したものであるとの素朴な思考を持っていた。しかし、ゼウスを主神とするコスモス(秩序宇宙)の観念が成立するにつれ、おのずと哲学的な構想を持つ世界の始原神話が語られるようになった。それらは代表的に四種類のものが知られる(ただし、2と3は、同じ起源を持つことが想定される)。

神々の系譜や人間の起源などを系統的な神話に纏めあげたヘーシオドスは、その『神統記』において二つの主要な起源説を伝えている。

  1. ヘーシオドスは古代オリエントなどの神話の影響を受けたと考えられ、後に「混沌」と解釈されるカオスが最初に存在したとしている。ただし、彼はカオスを混沌の意味では使っていない。それは空隙であり、カズムとも呼ばれる[23]。世界が存在するためには、まず最初に場所(コーラー)が必要であり、ここから空隙としてのカオスが最初にあったとする。その後、大地(ガイア)が万物の初源としてカオスのなかに存在を現し、天(ウーラノス)との交わりによって様々な神々を生み出したとされる。ウーラノス、クロノス、そしてゼウスにわたる三代の王権の遷移がここでは語られることになる[24] [25]
  2. 他方、ヘーシオドスは、起源が異なると考えられる、自然哲学的構想を備えた世界の始源神話を同じ『神統記』においてうたっている[26]。胸広きガイアが存在し、それと共に、地下の幽冥タルタロスと何よりも美しいエロース)が生まれたとする。原初にエロースが生まれたとするのは、オルペウス教の始原神話に通じている。エロースは生殖にあって大きな役割を果たし、それ故、愛が最初に存在したとする[27]
  3. 第三の宇宙観哲学的・宗教的に体系化されていたと考えられるが、オルペウス教が基盤を置いた、あるいはこの宗教が提唱した世界の初源神話である。オルペウス教は多様な神話を持っており、断片的な複数の文書が伝える内容は異同がある[28]。その特徴としては、原初に水や泥があり、大地(ガイア)も存在し、クロノス=時 Khronos(ウーラノスの子のクロノス Kronos とは異なる)やエロースが原初にあった。そして「原初の卵」が語られ、他のギリシア神話では語られない、パネースΦανης)あるいはプロートゴノスΠρωτογονος)が存在したとする[29]
  4. 以上に挙げた世界の始原神話以外に、第四のものとして、ホメーロスが『イーリアス』でうたっている、より古く単純とも言える始原についての神話がある。それは万物のはじめにオーケアノス(海洋・外洋の流れ)が存在したという神話で、彼と共に妻テーテュースが存在したとされる。この両神の交わりより、多数の神や世界の要素が生み出されて来たとする。これは素朴な神話で、海岸部の住民が信じていた始原神話と考えられる[30] [31]

自然哲学的な始原の神々

ヘーシオドスがうたう第二の自然哲学的な世界創造と諸々の神の誕生は、自然現象や人間における定めや矛盾・困難を擬人的に表現したものとも言える。このような形の神々の誕生の系譜は、例えば日本神話(『古事記』)にも見られ、世界の文化で広く認められる始原伝承である。『神統記』に従うと、次のような始原の神々が誕生したことになる。

まず既に述べた通り、コーラーとしてのカオス(空隙)と、そのうちに存在する胸広きガイア(大地)、そして暗冥のタルタロスと最も美しい神エロースである。ガイアより更に、幽明のエレボスと暗きニュクス(夜)が生じた。ガイアはまた海の神ポントスを生み、ポントスから海の老人ネーレウスが生まれた。またポントスの息子タウマースより、イーリス(虹)、ハルピュイアイ、そして三人のゴルゴーン姉妹等が生まれた。

一方、ニュクスよりはアイテール(高天の気)とヘーメラー(昼)が生じた。またニュクスはタナトス(死)、ヒュプノス(睡眠)、オネイロス(夢)、そして西方の黄金の林檎で著名なヘスペリデスヘスペリス=夕刻・黄昏の複数形)を生み出した。更に、モイライ(運命)、ネメシス(応報)、エリス(闘争・不和)なども生みだし、この最後のエリスからは、アーテー(破滅)を含む様々な忌まわしい神々が生まれたとされる[32]

神話2:オリュンポス以前

ゼウスの王権が確立し、やがてオリュンポス十二神としてコスモス(秩序)が世界に成立する。しかし、ゼウスの王権の確立は紆余曲折しており、ゼウスは神々の王朝の第三代の王である。

最初に星鏤めるウーラノス(天)がガイア(大地)の夫であり、原初の神々の父であり、神々の王であった。しかし、ガイアはウーラノスに恨みを持った。ウーラノスの末息子であるクロノスがガイアの使嗾によって巨大な鎌を揮って父親の男根を切り落とし、その王権を簒奪したとされる。このことはヘーシオドスがすでに記述していることであり、先代の王者の去勢による王権の簒奪は神話としては珍しい。これはヒッタイトフルリ人の神話に類例が見いだされ、この神話の影響があるとも考えられる[33] [34]

クロノスとティーターン神

天使像のクロノス

ウーラノスより世界の支配権を奪ったクロノスは、第二代の王権を持つことになる。クロノスはウーラノスとガイアが生んだ子供たちのなかの末弟であり、彼の兄と姉に当たる神々は、クロノスの王権の元で、世界を支配・管掌する神々となる。とはいえ、この時代にはまだ、神々の役割分担は明確でなかった[35]。クロノスの兄弟姉妹たちはティーターンの神々と呼ばれ、オリュンポスの十二の神に似て、主要な神々は「ティーターンの十二の神」と呼ばれる。

これらのティーターンの十二の神としては、通常、次の神々が挙げられる。まず主神たる1)クロノス、その妻である2)レアー女神、長子3)オーケアノス、4)コイオス、5)ヒュペリーオーン、6)クレイオス、7)イーアペトス、8)テーテュース女神、9)テミス女神(法)、10)ムネーモシュネー女神(記憶)、11)ポイベー女神、12)テイアー女神である[36]アポロドーロスディオーネー女神をクロノスの姉妹に挙げているが、この名はゼウスの女性形であり、女神の性格には諸説がある。

ティーターンはこれ以外にも、子孫が多数存在した。後にティーターンはオリュンポス神族に敗れ、タルタロスに落とされるが、全員が罰を受けた訳ではない。広義のティーターンの一族には、イーアペトスの子であるアトラースプロメーテウスエピメーテウスや、ヒュペリーオーンの子であるエーオース)、セレーネー)、ヘーリオス太陽)などがいた[37]

神々の王クロノスはしかし、母ガイアと父ウーラノスから呪いの予言を受ける。クロノス自身も、やがて王権をその息子に簒奪されるだろうというもので、クロノスはこれを懼れて、レアーとのあいだに生まれてくる子供をすべて飲み込む。レアーはこれに怒り、末子ゼウスを身籠もったとき、密かにゼウスを出産し、石を襁褓にくるんでこれをクロノスに渡した[38]

オリュンポス神の台頭と勝利

ゼウスが成年に達すると、彼は父親クロノスに叛旗を翻し、まずクロノスに薬を飲ませ、彼が飲み込んでいたゼウスの姉や兄たちを吐き出させた。クロノスは、ヘスティアーデーメーテールヘーラーの三女神、そして次にプルートーン(ハーデース)とポセイドーン、そしてゼウスの身代わりの石を飲み込んでいたので、順序を逆にしてこれらの石と神々を吐き出した。

オリュンポス神とティーターノマキアー

ゼウスたち兄弟姉妹は力を合わせてクロノスとその兄弟姉妹たち、すなわちティーターンの一族と戦争を行った。これをティーターノマキアー(ティーターンの戦争)と呼ぶ。彼らはティーターネスに勝利し、ティーターン族をタルタロスに幽閉し、百腕巨人(ヘカトンケイレス)を番人とした。こうして勝利したゼウスたちは互いに籤を引き、その結果、ゼウスは天空を、ポセイドーンは海洋を、ハーデースは冥府をその支配領域として得た[39]

しかしゲー(ガイア)はティーターンをゼウスたちが幽閉したことに怒り、ウーラノス(天空)と交わり、ギガース(巨人)たちを生み出した。ギガースたち(ギガンテス)は巨大な体と獰猛な気象を備え、彼らは大挙してゼウスたちの一族に戦いを挑んだ。ゼウスたちは苦戦するが、シシリー島をギガースの上に投げおろすなど、激しい争いの末にこれを打破した。これらの戦いをギガントマキアー(巨人の戦争)と呼称する。しかし、ゲーはなお諦めず、更に怒ってタルタロスと交わり、怪物テューポーンを生み出した。テューポーンは一時、ゼウスを捕虜にするなど、圧倒的な強さを誇ったが、オリュンポス神族の連携によって遂に敗北し滅ぼされた[40]

かくして、ゼウスの王権はここに確立した。

神話3:オリュンポスの世界

神々は、ホメーロスがうたっているところでは、オリュンポスの高山に宮敷居まし、山頂の宮殿にあって、絶えることのない饗宴で日々を過ごしているとされる。神々は常磐に居ます、すなわち不死で、神食(アンブロシア)を食べ、神酒(ネクタル)を飲んでいるとされる[41]

十二の神々

ゼウスの王権の元、世界の秩序の一部をそれぞれ管掌するこれらの神々は、オリュンポスの神々とも呼ばれ、その主要な神は古くから「十二の神」(オリュンポス十二神)として人々に把握されていた。十二の神は二つの世代に分かれ、クロノスレアーの息子・娘に当たる第一世代の神々と、ゼウスの息子・娘に当たる第二世代の神々がいる。

時代と地方、伝承によって、幾分かの違いがあるが、主要な十二の神は、第一世代の神は、秩序(コスモス)の象徴でもある神々の父 1)ゼウス、2)ヘーラー女神、3)ポセイドーン、4)デーメーテール女神、5)ヘスティアー女神の5柱に、第二世代の神として、6)アポローン、7)アレース、8)ヘルメース、9)ヘーパイストス、10)アテーナー女神、11)アプロディーテー女神、12)アルテミス女神の7柱である。また、ときとしてヘスティアーの代わりに、ディオニューソスが十二神に入る。ハーデースとその后ペルセポネーは、地下(クトニオス)の神とされ、オリュンポスの神ではないが、主要な神として、十二神のなかに数えることがある[42] [43]

それぞれの神は、崇拝の根拠地を持つのが普通で、また神々の習合が起こっているとき、広範囲な地方の神々を取り込んだ神は、数多くの崇拝の根拠地を持つことにもなる。アテーナイパルテノン神殿小壁には、十二の神の彫像が刻まれているが、この十二神は、上記の一覧と一致している(ディオニューソスが十二神に入っている)。

オリュンポスの神々1

オリュンポスを代表する十二の神と地下の神ハーデース等以外にも、オリュンポスの世界には様々な神々が存在する。彼らはオリュンポスの十二神や他の有力な神が、エロースの力によって互いに交わることによって生まれた神である。また、広義のティーターンの一族に属する者も、オリュンポスの一員として神々の席の一端を占め、重要な役割を担っている。

神々のあいだの婚姻あるいは交わりによって生まれた神には次のような者がいる。

ゼウスの息子と娘

神々の父ゼウステティス

神々の父ゼウスは、真偽を知る智慧の女神メーティスを最初の妻とした。ゼウスはメーティスが妊娠したのを知るや、これを飲み込んだ。メーティスの智慧はこうしてゼウスのものとなり、メーティスよりゼウスの第一の娘アテーナーが生まれる。ゼウスの正妻は嫉妬深きヘーラーであるが、ヘーラーとのあいだには、アレースヘーパイストス、青春の女神ヘーベー、出産の女神エイレイテュイアが生まれる。大地の豊穣の大女神デーメーテールとのあいだには、冥府の女王ペルセポネーをもうけた。

ゼウスはまた、ディオーネーとのあいだにアプロディーテーをもうける。アプロディーテーは、クロノスが切断した父ウーラノスの男根を海に投げ入れると、そのまわりに生じた泡より自然に生じたとの説もあるが[44]、オリュンポスの系譜上はゼウスの娘である[45]。ゼウスは、ティーターンの一族コイオスの娘レートーとのあいだにアポローンアルテミス女神の姉弟の神をもうけた。更にティーターンであるアトラースの娘マイアとのあいだにヘルメースをもうけた。最後に、人間の娘セメレーと交わってディオニューソスをもうけた。

アテーナーはメーティスの娘であるが、その誕生はゼウスの頭部から武装して出現したとされる。これに対抗して妃ヘーラーは、独力で息子ヘーパイストスを生んだともされる。

ゼウスは更に、ティーターンの女神と交わり、運命季節芸術の神々をもうける。法律・掟の女神テミスとのあいだに、ホーライの三女神とモイライの三女神を。オーケアノステーテュースの娘エウリュノメーとのあいだにカリテス(優雅=カリス)の三女神を。そして記憶の女神ムネーモシュネーとのあいだに九柱の芸術の女神ムーサイムーサ)をもうけた。

十二神の息子と娘

有翼のエロース

オリュンポスの十二の神々は、ゼウスを例外として、息子や娘が少ないかいない場合がほとんである。ポセイドーンは比較的に息子に恵まれているが、アンピトリーテーとのあいだに生まれた、むしろ海の一族とも言えるトリートーンペンテシキューメー、ヘーリオスの妻ロデーを除くと、怪物や馬や乱暴な人間が多い[46]

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