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| サリン | |
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| IUPAC名 | メチルホスホノフルオリド酸イソプロピル |
| 別名 | GB IMPF |
| 分子式 | C4H10O2FP |
| 分子量 | 140.1 g/mol |
| CAS登録番号 | [107-44-8] |
| 形状 | 無色無臭の液体 |
| 密度と相 | 1.1 g/cm3, 液体 |
| 相対蒸気密度 | 4.86(空気 = 1) |
| 融点 | −58~−57 °C |
| 沸点 | 147 °C |
| SMILES | CC(C)OP(C)(F)=O |
| 出典 | kis-net |
サリン(Sarin)は、1938年、ナチス・ドイツ下で開発された有機リン化合物で神経ガスの一種。サリンという名は、開発に携わったシュラーダー (Schrader)、アンブロス (Ambros)、ルドリガー (Rudriger)、ファン・デア・リンデ (Van der LINde) の名前を取って名付けられた。VXガスと同じでコリンエステラーゼ阻害剤として作用する。有機リン系殺虫剤の開発過程で発見されたが、人体に対する毒性が高すぎるため殺人以外に用途は無い。
目次 |
サリンはもともとは1902年にすでに合成されていたが、その毒性は知られていなかった。毒性に着目したドイツ軍は、第二次世界大戦中に量産を計画するが、ナチスは敗戦までに7000トン以上の「サリン」を貯蔵していたにも拘らず終戦までに使うことはなかった。アドルフ・ヒトラーの側近だったヨーゼフ・ゲッベルスは「サリン」投入を主張した。 また、国防軍最高司令部総長ヴィルヘルム・カイテル陸軍元帥も戦局を打開するため、「サリン」投入に前向きだった[要出典]。しかし、第一次世界大戦で毒ガスによって視神経や脳神経に一過性の障害を負い喉や眼を負傷した経験を持つヒトラーは彼らの進言を全く聞き入れず、「サリン」を戦争やユダヤ人の殺害に使用することはなかった。
殺傷能力が非常に強く、吸収した量によっては数分で症状が現れる[1]。また、呼吸器系からだけでなく皮膚からも吸収される[2] [3]。
神経に障害を起こす。自覚症状としては、まず最初に目がちかちかする・視界が暗くなるなどの異常が起こり(瞳孔の収縮による。これは「縮瞳」とよばれる)、ついで涙が止まらなくなったり、くしゃみや鼻水など呼吸系の障害が起きる。呼吸困難を伴うこともある。さらに重度の場合、全身痙攣などを引き起こし、最悪の場合死にいたる。50% 致死濃度 (LC50) は、1 m3 あたり 100 mg(1分間)。毒性は、サリンがアセチルコリンエステラーゼ等の活性部位に不可逆的に結合し、アセチルコリンの分解を阻害して神経伝達を麻痺させる作用によるものである[4]。
「気体比重は4.86と空気より重く、その場にとどまりやすい」とも言われるが、ありえる濃度は0.3%(3000ppm)以下であり、そのときの気体比重は1.01でしかなく、ほとんど関係がない。また、化学的に不安定で、熱分解や加水分解されやすい[2]。そのため、自然環境中には存在しない。加水分解によってフッ素が水分子の水素原子と結びつき、それが同じ水分子の水酸基と入れ替わることにより、サリンはフッ化水素とメチルホスホン酸イソプロピルに変化し、さらに後者はメチルホスホン酸とイソプロピルアルコールに分解する。したがって水源地や浄水場にサリンを投げ込んでも直ちに加水分解されるほか、活性炭処理やオゾンによる高度浄水処理の工程を通ればほぼ完全に無毒化される。また、塩基性条件下で加水分解が加速されることを利用して、サリンの除染には塩基性水溶液が用いられる[1]。
日本では、オウム真理教が製造・使用し、松本サリン事件(1994年)、地下鉄サリン事件(1995年)により多数の死傷者を出した。これを受けて、政府はサリン等による人身被害の防止に関する法律(平成7年4月21日法律第78号)を成立させ、現在では所持や生産などが禁止されている。
アメリカ軍では化学兵器としてサリンを所持しているほか、北朝鮮でも製造・所持をしている疑いがある。[5][6]イラン・イラク戦争時、イラク軍はイラン軍および自国のクルド人に対し、サリンを使用した。このうちクルド人に対して行なわれたものを、事件の起こった町の名を取って「ハラブジャ事件」と呼ぶ。
経皮毒性の一例を示すと、経皮投与におけるヒトの半数致死量は28 mg/kgである[2]。これは、体重60 kgのヒトが1680 mg(約1.5 mL)のサリンを経皮吸収すると、その半数が死亡するということである。また、皮膚に一滴垂らすだけで確実に死に至るとの記述も存在する[4]。
サリンに曝露すると1分と経たずに以下のような症状が出る。曝露量が多い場合には軽症、中等症を飛ばしていきなり重症になり死亡する場合もある。
サリンの被害者にどのような後遺症が残るのか、専門的に研究されたのは世界中で唯一、日本だけである。これは松本サリン事件と地下鉄サリン事件の二回にわたる惨事で多数の患者が発生し、これを医学的に追跡調査出来た事例が他にないためである。ただし、両事件では100以上の論文が発表されているものの、新たな知見は見出されなかった。これはすでに神経剤の臨床試験データが数百人分存在するからである。
後遺症には、主に心的外傷後ストレス障害などの心的な物と、目がかすむ、身体がだるい、熱が出るなど軽微な物から、完全に身体を動かせないほどの重度な物までがある。身体的な後遺症の原因は中枢神経系や副交感神経の回復不能な損傷だと言われている。10年以上が経過しても回復が見られない事例が多く、一生涯にわたる障害になると思われる。なお、地下鉄で使われたサリンは不純物が多く、サリン以外の毒性も影響している可能性がある。
これはサリン以外の神経ガスでも同様の後遺症が残る可能性が高いと言われており、神経ガスの被害者は助かったとしても一生涯にわたる重い障害を背負う可能性が高いことを示している。
有機リン系農薬に見られる遅発神経障害(1~3週間以降)は起こらないとされる。これはサリンの急性毒性が高いためにごく少量で中毒し、アセチルコリンエステラーゼ阻害作用が高い反面、神経毒エステラーゼ阻害作用はあまり高くないからである。
サリンは合成過程における中間生成物の段階で極めて毒性が高く、廃棄物の毒性も強い。そのため専門家でない者が合成を試みると合成過程で負傷・死亡する危険性が高い。オウム真理教のサリン製造プラントを見た専門家は、このような溶媒が漏れるような雑な装置で合成するのは不可能だとした。
サリンの合成は、有機リン化合物合成における手法を通じて行われる。
三塩化リンなどのリン塩化物から亜リン酸トリメチルを合成し、さらにメチルホスホン酸ジメチル・メチルホスホン酸ジクロライドを経てメチルホスホン酸ジフルオリドを得る。これがサリンの最終前駆体となる。オウム真理教に対する査察ではオウム真理教の施設から三塩化リン・フッ化ナトリウム(ジメチル・メチルホスホン酸ジクロライドからメチルホスホン酸ジフルオリドを合成する段階で使用)などの発見が報道され、オウム真理教のサリン製造疑惑を裏付ける結果となった。
メチルホスホン酸ジフルオリドにイソプロピルアルコールや金属イソプロピル化物を反応させるとサリンが生成する。サリンそのものは反応性が高い上に漏洩した場合に非常に危険であることから、一般的な化学兵器砲弾や爆弾においてはメチルホスホン酸ジフルオリドとイソプロピル化合物を分離状態で同梱しておき、兵器の使用時に混合する方法がとられた(バーナリー方式)。イランイラク戦争でイラク軍が使用したのがこの方式である。
オウム真理教による松本サリン事件の際には反応装置をとりつけた自動車による散布・地下鉄サリン事件の際にはサリンを有機溶剤に溶解させたものを袋に密閉し、穴をあけて染み出させることによる散布が行われたとされる。
松本サリン事件における冤罪報道の影響で、日本では農薬からサリンの合成が可能であると言われることがあるが、それは誤りである。前駆体であるリン塩化物は法規制が敷かれているものの、化学工業や化学実験では汎用されているために比較的入手しやすいのは事実である。しかし、製造工程では高度な脱水技術や多段階の反応制御・精製技術が必要であり、「単に市販されている農薬を混ぜただけ」で発生させることは不可能である。
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| 血液剤 : | シアン化塩素 (CK) – シアン化水素(AC) | |
| びらん剤: | ルイサイト (L) – サルファマスタード (HD, H, HT, HL, HQ) – ナイトロジェンマスタード (HN1, HN2, HN3) – ホスゲンオキシム (CX) – エチルジクロロアルシン(ED) | |
| 神経ガス: | G剤: タブン (GA) – サリン (GB) – ソマン (GD) – シクロサリン (GF) – GVガス | |
| 窒息剤: | 塩素ガス – クロロピクリン (PS) – ホスゲン (CG) – ジホスゲン (DP) | |
| 無力化ガス: | Agent 15 (BZ) – KOLOKOL-1 | |
| 嘔吐剤: | アダムサイト – ジフェニルクロロアルシン – ジフェニルシアノアルシン | |
| 催涙剤: | トウガラシスプレー (OC) – CSガス – CNガス (mace) – CRガス | |
| 焼夷剤: | 三フッ化塩素 | |
| 対物剤: | パイロフォリック | |
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