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ジェイアール式マグレブ とは?

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ジェイアール式マグレブ(ジェイアールしきマグレブ、JR-Maglev)は、鉄道総合技術研究所(JR総研)及び東海旅客鉄道(JR東海)により開発が進められている磁気浮上式鉄道(以下マグレブ)である。

出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』


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ウィキペディア(Wikipedia)記事


ジェイアール式マグレブ(ジェイアールしきマグレブ、JR-Maglev)は、鉄道総合技術研究所(JR総研)及び東海旅客鉄道(JR東海)により開発が進められている磁気浮上式鉄道(以下マグレブ)である。

新幹線を始めとする、従来の軌道接地走行の技術的問題点を回避できる浮上走行を行う。超電導電磁石によるリニアモータでの走行は、世界でもこのJRマグレブのみであり、基礎技術から日本で独自に研究・開発が行われた点も特筆すべき事柄である。技術的には既に実用化段階にあり、試運転(有人)で2003年12月に世界最高の581km/hを記録、現在もこの世界記録を保持している。山梨県に18.4kmの実験線があり、一般試乗でも500km/hを体感することができた。

2006年に、実験線の設備を実用レベルの仕様に全面的に改修するとともに42.8kmに延伸する事を決定し、これらの工事と実用化確認試験に専念するため、2007年4月20日、超電導リニア試乗会の中止が発表された。

マグレブにはこの他、ドイツトランスラピッドや日本のHSSTなどがある。

2025年を目標に中央リニア新幹線として、首都圏中京圏間の営業運転を開始する予定である。

JR式マグレブ MLX01-1
愛・地球博での展示)
JR式マグレブ MLX01-2。世界最高速度581km/h、山梨実験線にて。
JR式マグレブ MLX01-901
JR式マグレブ 時速501km/hの瞬間(2004年6月18日、山梨リニア実験線試乗会)

目次

基本技術

浮上

磁気浮上のイメージ

電磁誘導方式 (EDS) の誘導反発方式が採用されている。誘導反発方式について説明する。移動する磁界内に置かれたコイルには誘導起電力が生じる。これは発電機と同じ原理であるが、誘導起電力で生じる電流がコイル内に流れると、起電力を生じさせた磁界と反対方向の磁界が発生し、反発力となる。誘導反発方式の磁気浮上では、これを利用して車両側に強力な電磁石を、軌道側にコイルを設置し、車両が高速で進行すると軌道側のコイルには電流が発生し、この電流がコイルを流れると車両と反発する方向で磁界が生じる。結果車両が浮上する仕組みとなっている。反発力は、車両の速度に応じて増加する。

この方式の利点としては、以下が挙げられる。

  • 比較的大きな浮上量が得られる。
  • 浮上量に対して制御を行う必要がない。

またこの方式の欠点としては、以下が挙げられる。

  • 車両が停止または低速に移動している間は十分な反発力が得られず、浮上できない。
  • 浮上コイル内に大きな電流が発生するとコイルの抵抗により発熱が生じ、結果として走行中の車両に対し抗力(磁気抵抗力)が生じる。

宮崎の実験線までは、軌道底面に浮上コイルが設置(対向反発浮上方式)されていたが、山梨の実験線からは側壁浮上方式が採用されている。側壁浮上方式とは、文字通り浮上コイルを側壁に配置するものである。また浮上コイルの巻き方は上下方向で8の字になるように巻かれている。この場合、高速に進入してくる磁界に対して、浮上コイル下側からは反発力、浮上コイル上側からは吸引力が発生し、車両が浮上する。また、浮上力はコイル中心から磁界中心のずれに比例して発生し、コイル内の電流も同じである。浮上が安定すれば、コイル内の電流を小さくすることができ、車両に対する磁気抵抗力を小さくすることにつながる。さらに軌道底面からの浮上量は側壁浮上コイル設置位置で自由に決定できる利点もある。山梨実験線の仕様では約100mmの浮上が得られる位置に浮上コイルが設置されている。

推進

推進のイメージ (線型同期電動機)

車両の推進には、線型同期電動機(リニアシンクロナスモータ、Linear Synchronous Motor)方式が採用されている。車両側の電磁石(浮上用電磁石と共用)が界磁となり、軌道側に設置された推進コイルの磁極は地上変電所インバータにより入力される電流の周波数によって切り替わり、車両側の推進力を与えている(地上一次方式)。磁気推進のためには車両位置を正確に検知する必要があるが、車両側に推進に関わる制御装置などを持つ必要が無い。このため車両側への給電の必要もなくなる。

また推進コイルに流す電流の周波数に速度が比例し、電流の振幅が推進力に比例する。そして推進時との入力位相を180度反転させると制動力が働く。制動時のエネルギーは電源側に回収する回生ブレーキにもなる。

案内

案内のイメージ

基本的には、軌道側の浮上コイルを利用して行う。案内は、車両中央が軌道の中央からずれたときに復元力が発生するようにすればよい。対向反発式でも側壁浮上方式でも、軌道の左右に設置された浮上コイルを接続して閉ループを構成している。

車両本体が中心線から左右どちらかにずれていれば、左右のコイルを通過する磁界の大きさにも差が生じ、浮上コイルの左右を結ぶ回路にこの差に比例した電流が生じて、車両を復元する方向に力が生じる。この方式はヌルフラックス方式と呼ばれる。

車両技術

マグレブの場合、地上一次式リニアモータで浮上・推進・案内ともに超電導電磁石を利用している特徴があることは既に述べた。マグレブは車両走行のための制御はすべて地上側にあり、超電導電磁石も一度超電導状態となればその後電力供給する必要がない。このため車両の小型化、軽量化は比較的図りやすい構造である。新幹線と比べ、車重量比で約1/3で済む。

台車

台車の模型。超電導電磁石、補助支持車輪・案内車輪、冷却装置の位置関係が示されている

超電導電磁石およびその冷却システム、補助支持車輪・案内車輪がパッケージ化された台車を持つ。台車と車両本体との間はエア・サスペンションで支持されている。

超電導電磁石

車両側に浮上、推進両用に強力な磁界を安定して得るため超電導電磁石が使用されている。マグレブで使用されている超電導電磁石のコイルは、ニオブチタン(NbTi)合金系の極細多芯線を銅母材に埋め込んだものである。超電導とは電気抵抗がゼロになる現象で、この状態で閉ループを構成すれば電圧を加えることなく永久に電流が流れ続ける。これを永久電流と呼ぶが、これにより、外部からの電力供給をすることなく、約1T(テスラ)の磁界を発生する強力な電磁石を構成することができる。コイル内を流れる電流は700A程度(実験車両MLX01の場合)である。

ニオブ・チタン系合金で超電導状態を保持できる温度は4K(-269度)であり、常にこの温度に冷却する必要がある。マグレブでは、液化ヘリウムを用いて超電導電磁石を冷却し、超電導状態を保つ工夫がなされている。具体的には、超電導電磁石は、外部からの熱進入を抑えるため液化ヘリウムの入った内槽容器に入っている。さらに内槽容器は輻射シールド板が設けられ、液化窒素で約77K(-196度)に冷却される。さらに内槽容器と外気の間の空気を抜き、真空状態になるように外槽容器に包まれている。仮に温度上昇により超電導状態が解除されると電気抵抗が発生し大電流が保持できず急激に磁力が失われてしまう(クエンチ現象)。

宮崎実験線で使用されていたML-500では、浮上用と推進用の超電導磁石を別々に用意していたが、その後大きな超電導電磁石を製作できるようになり、MLU-001からは浮上・案内・推進全て兼用となった。さらに、前述のクエンチ現象の回避のためコイル自体の発熱を抑える工夫がなされている。宮崎での様々な工夫・知見は、山梨実験線MLX01の超電導電磁石に結実し、クエンチ皆無となり、即実用可能な状況となって久しい。この状況を踏まえ、新たにリニア用高温超電導磁石を開発する動きとなり、大いに成果が上がっているが、その裏には、開業運転の重責を担うであろうニオブチタン(NbTi)合金系の超電導電磁石の存在することが大きいであろう。

2001年に超伝導になることが発見された二ホウ化マグネシウム(MgB2)による新しい超電導電磁石コイルの開発が、JR東海と独立行政法人物質・材料研究機構などの共同により始まった。この新しいコイルは、約20K(-253度)で超電導状態の維持が可能であり、冷凍機による直接冷却が可能で、液化ヘリウムによる冷却の必要が無い。さらに電流低減が1日あたり約0.5%でロスが少ない。

さらには、酸化物超電導物質による高温超電導の研究が活発に行われている。特に、ビスマス系超電導体やイットリウム系超電導体の線材による超電導コイルがマグレブなどにも使える材料として研究されている。それらも寒剤が要らない直接冷却が可能なため、配管や穴あき加工をしたコイル締結金具等が要らないことや、約90K(-183度)ほどで超電導状態を維持できる可能性があることで、実用化されれば、マグレブ超電導電磁石にかかるコストを大幅に低減でき、軽量化にもつながる。一方、現状ではニオブ・チタン系合金なみの長尺線が製造しにくいこと、線材の価格が比較的高価であること等が指摘されている。実用化の面で、近年、ビスマス系線材による高温超電導磁石の進展が目覚しく、ビスマス系線材のコイルを液化ヘリウム及び液化窒素といった寒剤無しで20K直接冷却をする高温超電導電磁石が、山梨実験線のMLX01に搭載され、走行試験で553km/hが確認された。一方、イットリウム系超電導体は、この高温超電導電磁石では永久電流スイッチ等に使われている。最近になって、ビスマス系線材そのものの強度・性能・長尺化等が、その走行試験当時より飛躍的に向上してきた。

永久電流スイッチ

永久電流スイッチとは、超電導コイルに流れる永久電流の開閉を行う装置である。マグレブの超電導電磁石コイルには熱式の永久電流スイッチが採用されている。熱式永久電流スイッチとはコイルの一部を暖めて超電導状態を解除することで永久電流を遮断する方式である。

パワーリード

超電導コイルを励磁するには外部から電流を流す必要があるが、その際に超電導コイルと接続する部分がパワーリードである。極低温状態のコイルと外界とを接続するため熱進入路となってしまうので、短時間でコイルに電流を流す必要がある。

冷却システム

ニオブ・チタン系の超電導電磁石を超電導状態で保持するためには、外部からの熱の進入を遮断するとともにコイルを冷却する必要がある。このためマグレブの車両本体内には超電導電磁石冷却システムが搭載されている。冷却システムは車載冷却機・バッファタンクと電磁石が1つの系で直接接続されて、コイルを冷やす直接冷却となっている。液化ヘリウムは高価なものであり、マグレブでは気化ガスを再液化して再利用するシステムの研究が行われた。

マグレブの冷却システムでは蒸発したヘリウムガスを回収して車載冷却装置で再液化し、バッファタンクに保存する。車載冷却機は、気化したヘリウムガスを冷却するための装置で、クロードサイクル方式を採用している。クロードサイクル方式とは、自動車ガソリンエンジンと同じようにシリンダとピストン、吸気弁、排気弁からなる。吸気弁から高圧のガスをシリンダ内に取り込み、ガスにピストンを押させながら膨張させてガスを冷却。排気弁を開いて冷却したガスを排出する装置になっている。

補助支持車輪・案内車輪

マグレブで採用されている誘導反発方式の欠点として、車両が低速時には十分な磁気浮上力が得られないことは既に説明した。このため低速時(約150km/h以下)の走行速度の時には補助支持車輪と案内車輪を出して走行を行う。車輪にはラジアル構造のゴムタイヤが使用されている。補助車輪は十分な磁気浮上力が得られた時(約150km/h以上)、車両本体内に格納される。車輪の支持脚は、ダンパ機能を持ち、また非磁性で軽量・強度のあるチタン合金などが使用されている。さらには補助車輪のバックアップとして外接輪と呼ばれるアルミディスクが備え付けられている。

ゴムタイヤは、高速走行中の磁気浮上力の消失に備え、550km/hで走行中の状態から着地できる性能を持っている。ブリヂストン戦闘機のタイヤを基に開発したという。

ブレーキ

通常運行時は、リニアモータを発電機として運動エネルギーから電気エネルギーに変換する回生ブレーキが使用される。また回生ブレーキが故障した場合に備え、地上コイルを短絡させて制動力を得る発電ブレーキも用意されている。さらに500km/hからの緊急停止や回生ブレーキや発電ブレーキが不能となった場合でも制動力を確保するために以下のブレーキ装置が車両側に3重に用意されている。

空力ブレーキ
空気断面を大きくすることで空気抵抗を増して停止させるブレーキ。MLU001に対して1989年に空力ブレーキの取り付け改造が行われ、山梨実験線車両のMLX01でも採用されている。
ディスクブレーキ
補助支持車輪に取り付けられたディスクをパッドで挟んで停止させるブレーキ。自動車等でも用いられている方式。500km/hからの停止にも耐えられるようにディスクには炭素複合材が使用されている。
接地ブレーキ
走行時に補助支持車輪が故障したり、急激に超電導電磁石の磁界が失われたなどの緊急事態の発生を想定し、車体に取り付けたブレーキシューを軌道の走行面に押し付けて停止させる。

車上電源

マグレブは地上一次式であるため、車両推進に関わる電力は車両側で持つ必要はない。しかしその他の制御や室内の照明空調等に使用するための電力は当然必要となる。今まで、ニッケルカドミウム形の蓄電池や誘導集電装置による非接触給電、ガスタービンによる発電などが試された。将来、燃料電池の技術開発が進めば、マグレブへの搭載も考えられる。

車両位置検知

マグレブはリニア同期モータであるため、軌道側の推進コイルの磁極を切り替えるには正確な車両位置検知が必要となる。宮崎実験線では、車両から浮上コイルをカウントして位置検知を行っていた。山梨の実験線では交差誘導線方式による車両検知が行われている。

交差誘導線方式とは、車両側に発信機を設置し、ここから一定周波数の信号を送る。軌道側には、一定周期で開口したループを持ち、ループの巻き方向をループ毎に反転させたアンテナ線を軌道に沿って用意する。このアンテナ線はループの開口位置を少しずつずらし6本重ねてある。6本のアンテナは車両側から受信した信号を受信し、この信号を合成して正弦波を構成する。この正弦波を軌道側の推進コイルと同期するように配置することで同期モータ用の位置検知として使用している。また正弦波の数をカウントすれば、列車の絶対位置も検知できる。その精度は数cmレベルである。

軌道

基本構造

山梨実験線に敷設されたコイル。下から出ている線が対面のコイルと接続されており、ヌルフラックス方式により案内力を発生させる

開発当初は、車両中央で凸部を跨ぐような、逆T字軌道が採用されていた。車両は逆T字を跨ぐ形で走行するが、この場合客室部分を確保するため車両の全高が高くなる欠点が存在した。宮崎実験線で1980年に軌道を改修してU字軌道に変更。この改修では、軌道底面に浮上用コイル、側壁に推進用コイルが設置されていた。

現在の山梨実験線では、側壁浮上方式が採用になった。推進と浮上の間での電磁気的外乱作用を少なくするため、U字軌道で側壁に二重の浮上用コイルおよび推進用コイルが重なるように設置されている。

また、浮上走行ができない低速走行時用に、補助支持車輪走行路が用意されている。また前述の車両位置検知のための交差誘導線が軌道に沿って敷設されている。

磁気抵抗に対する設計

高速に移動する車両の磁界の影響により、地上側の導体内に電磁誘導による電流が発生しこれを抗する力が車両側に働き、抵抗力(磁気抵抗)となる。磁気抵抗は空気抵抗より小さいが、強力な磁界を発生する超電導電磁石を使用するためこの影響は無視できない。

軌道部分では、低磁性・非磁性体の材料が要求される。コンクリートや軌道の補強材としては、低磁性の高マンガン鋼材やFRPなどの採用が検討されている。

建設方式

山梨の実験線では、コイルを地上に設置するのに、以下の3つの方式が試された。

  • 直付け方式
  • ビーム方式
  • パネル方式

現在は、より実用的な逆T字方式が採用されている。これは逆T字のコンクリートブロックにコイルを取り付けたものを、軌道に設置する方法である。

分岐装置

分岐装置は、当初様々な方式が考えられたが、山梨実験線では側壁移動方式トラバーサ方式が採用された。

側壁移動方式
側壁を上下左右に移動させて、進路を構成する分岐装置。主に低速車輪走行が行われる区間に採用される。
トラバーサ方式
軌道を可動桁に分割して軌道そのものを移動させる分岐装置。切り替えは30秒以下の時間で済み、主に高速浮上走行が行われる部分で採用される。軌道の移動には電動または油圧シリンダが使用される。

列車制御

マグレブの場合、軌道側に設置されたコイルで車両の運転制御が行われる同期モータの地上一次方式である。このため、列車の運転はすべて地上から行われる。同期モータのため正確な車両位置検知が必要となる。また電力変換装置(変電所)ごとに閉そく区間を設定し、1変電所1閉そく1列車による運転を行う。これらは従来の鉄道システムと大きく異なる点である。列車制御は、運行管理システム、駆動制御システム、保安制御システムにより行われる。

運行管理システム

設定された列車ダイヤから走行制御に必要な速度目標値となる速度曲線を求め、駆動制御システムに送る。

駆動制御システム

速度曲線より、速度目標値と位相同期に追随するように必要な推進力または制動力を計算し、電力変換装置に電流値と周波数を指示する。 また、列車在線区間にき電する制御を行う。

保安制御システム

列車位置検知装置、列車監視制御装置、保安速度制御装置、閉そく制御装置、構内保安制御装置などにより、列車の位置検知と速度監視、保安ブレーキの指令、閉そく区間の設定、分岐器の制御などを行う。

MTP

MTPとは、Maglev Train Protectionの略でマグレブで使用されている列車運行保安システムである。マグレブは新幹線をはじめとする従来の鉄道システムと大きく異なり、全てのエラー(人為ミス、故障、暴走など)を定義することは難しい。このため列車監視と保安ブレーキのシステムを運転システムと別系統で持っている。これがMTPである。

その他地上施設

変電所

前述のようにマグレブでは1列車を運行するために、必ず1つの電力変換装置を用意しなければならない。したがって、実用化するためには最初から列車の最大運行数を規定し、建設時には最大運行数にあわせて変電所を用意する必要がある。

駅舎

従来の鉄道と異なり、磁気遮断と待合時の快適性を考慮して外部とは遮断されたプラットホームの構成となる。山梨の実験線では、磁気シールドで覆われた外部と遮断されたプラットホームが設置されている。車両への乗降は空港のボーディングブリッジのような伸縮式乗降装置と、プラットホーム側の扉が90度回転し、スライド式の床が伸びて通路を確保する回転式乗降装置が設置されている。

実験車両

ML100

ML100(JR総研にて)

磁気浮上、シュー案内、リニア誘導モータ駆動の4人乗り展示車両。磁気浮上のMagnetic Levitationの略でML。100の数字は、鉄道100周年に由来する。実物は東京都国分寺市のJR総研に保管され、一般公開日(平兵衛まつり)には屋外に出され展示されることもある。また大阪市港区にある交通科学博物館に模型が展示されている。

ML100A

完全非接触磁気浮上に成功した。

ML500

ML500(交通科学博物館にて)
ML500の前面(交通科学博物館にて)

500は、500km/hを意味し、1977年に1台だけ試作された無人実験車両である。1979年に当時の世界最高速度517km/hをマーク。現在は交通科学博物館に展示されている。

ML500R

ML500に車載冷却装置を取り付けた実験車両。

MLU001

1980年から宮崎実験線のU字型軌道用として導入。強い磁力を発生させる超電導電磁石を搭載し、浮上と推進に同一コイルを使うことが可能となったため車両の小型化に成功した。先頭車両が2両、中間車両が1両製造された。3両編成時は座席数16。

MLU002

1987年に導入された実用車両をにらんだ実験車両で1両だけ試作された。両端を流線形状とし、客室スペースも広く取り入れ44人分の座席を確保していた。国鉄時代最後の実験車として貴重な存在であったが、1991年、実験走行中に補助支持車輪がパンクでロックしたことが原因で出火し、焼失してしまった(後述)。

MLU002N

1993年に導入された実験車両。MLU002とほぼ同様の外形であるが、正面窓が省略されている。ディスクブレーキ、空力ブレーキなどが追加されている。

MLX01

JR東海の実験車両MLX01-1(愛・地球博 JR東海 超電導リニア館にて)
JR式マグレブ MLX01車内(2004年6月18日撮影)
MLX01座席(2004年6月18日撮影)

1996年から導入された山梨の実験線用に開発された車両。Experiment(実験)のXが名前に付けられた。大量輸送に向けた実験を行うため、本格的な客室スペースが用意された。先頭車両の形状は空気抵抗の効果確認のため当初、ダブルカスプ型 (MLX01-1、MLX01-4) とエアロウェッジ型 (MLX01-2、MLX01-3) の2種類が用意され、2002年には主にトンネル突入時の空気振動低減、列車後端に位置したときの空力特性改善を目的とした超ロングノーズ型 (MLX01-901) が追加された。2005年日本国際博覧会(愛・地球博)では、ダブルカスプ型先頭車両の実物がJR東海のパビリオン前に展示された。MLX-01のデザインは手銭正道、戸谷毅史、松本哲夫による。

車両の連接部に、前後の車両に跨って1つの台車を配置する連接台車が採用されている。これは台車と客室の距離を離し、超電導コイルの影響を低減させる効果がある。超電導電磁石は台車当り2個搭載されている。台車と車体本体は空気バネによるサスペンションで接続され、乗り心地改善を図っている。

車体は、アルミニウム合金を主体としたセミモノコック構造である。トンネル走行時にかかる外圧変動にも耐えることができる設計となっている。また、空気抵抗を減らすため正面断面積をなるべく小さくなるように、低床車体が採用されている。

客室スペースには、座席が長尺中間車の場合、1両あたり4座席x17列の68席が用意されている。旅客用の収納スペースとして天井に荷棚が用意されている。乗降口は初期のMLX01では上下に開閉する扉であったが、MLX01-901では一般の鉄道車両と同じ水平開閉の扉になっている。また車上電源としては、誘導集電装置またはガスタービン発電を持つ車両がある。

車両は全部で9両ある。以下の編成はそれぞれの製造時の初期編成であり、そのままの編成、あるいは組み換えて3~5両編成2本によって走行試験を行う。

第1編成
第2編成
  • MLX01-3(エアロウェッジ型先頭車・甲府方)
  • MLX01-21(長尺中間車)
  • MLX01-12(標準中間車)
  • MLX01-4(ダブルカスプ型先頭車・東京方)
追加車両
先頭車が1両のみであるため単独で編成を組めない。

走行安全性

超電導電磁石

前述のクエンチ現象が発生する恐れがあるため、電磁石はそれぞれ独立した系となっており、仮に1つの電磁石がクエンチ現象により急激に磁力を失っても他のコイルに波及しないようになっている。また磁力を失った場合は、車両側の接地ブレーキで軌道と接地して制動、補助支持車輪を出して車体を保持する。また磁気を失ったコイルと対になるコイルの磁力を消してバランスを取る。

仮にクエンチ現象で発熱が起きると、液化ヘリウム・液化窒素が気化して体積が膨張するが、安全弁により大気中に放出されるため装置が破裂することは無い。またヘリウムは、不活性ガスであり人体への影響はない。

車両運動

マグレブは磁気浮上のため、軌道鉄道で起き得る蛇行運動現象は発生し得ない。しかし、走行中の車両が共振現象により、振動が大きくなって軌道と接触する危険性があるため、車両設計へそれを考慮する必要がある。

車両火災

1991年10月、宮崎実験線でMLU002が焼失する事故が発生した。原因は、補助車輪のゴムタイヤがパンクし車輪がロックしたまま走行し、車輪と軌道との摩擦で発火したものであった。車輪の素材に発火しやすいマグネシウムを使用したため一気に火が回ったと考えられている。この教訓を踏まえ、MLU002NならびにMLX-01では車両火災を防ぐため難燃性の素材を多用した。

地震

日本は比較的地震の多い地域であり、地震対策は重要な課題である。実用化時には新幹線と同様に地震を検知した場合、走行中の車両を停止させるシステムが採用される予定になっている。また常用の回生ブレーキで500km/hからの制動距離は約6kmであり、(比率としては)新幹線に比べ制動距離は短い。また地震で軌道に歪みが発生した場合でも、浮上量が約100mmあり軌道と車両の接触する可能性は極めて少ない。

天候

マグレブは浮上走行のため空力的安定は重要である。特に横風の影響は懸念されるが、軌道がU字型をしており、従来の軌道鉄道より強い。また風雨による運転基準は実用化時に、新幹線等の基準を参考に決定がなされると思われる。ちなみに、宮崎実験線では台風で空港が閉鎖されたときも走行実験を行い、特に問題は発生しなかった。

降雪地帯へ軌道を敷設する場合は、新幹線と同様の消雪装置を設置するか、もしくは軌道をシェルターで覆う必要が生じると思われる。

環境への影響

騒音

マグレブでは150km/h以上の走行では、完全非接触の走行が可能であるため騒音の主原因は空力による音のみである。空力騒音のエネルギーは音源のエネルギーとマッハ数の2乗との積で表現され、車両速度のほぼ6乗に比例するといわれている。

宮崎実験線で、防音壁の無い区間でのMLU002の300km/hの浮上走行では、軌道から25m離れた場所で、地上から1.2mの位置でのピーク騒音が79ホン程度であった。

磁界

マグレブでは定常磁界と走行中に生じる変動磁界が生じる。変動磁界は、運転速度にもよるが、その沿線では最高で50Hz程度が発生するといわれている。イギリスの国立放射線防護委員会(NRPB)が100Hzで2mTをガイドラインにしている。宮崎実験線での測定では高さ8mの高架橋の下の地表で0.05mT程度の強さでほぼ地磁気と同程度であった。また定常磁界においては、車内ではMLU002の超電導磁石直上の床で2mTで、このレベルでの生体への影響はないというのが定説である。

現在のMLX01では客室と超電導磁石の備わった台車は距離が有り、台車直上になる車両貫通部付近では磁気シールドを行うことで対処されているため、MLU002のさらに1/50程度まで低減されている。

二酸化炭素排出量

国土交通省『交通関係エネルギー要覧(2000)』によれば、単位輸送量あたりの二酸化炭素排出量(g-Co2/人キロ)は、鉄道18.3、航空機110.0、乗用車165.0であるのに対して、山梨実験線での推定値で40以上80未満(乗車率80%、500km/h走行時)となっている。

実験線

山梨実験線での走行試験

1972年、鉄道総合研究所内にML100などのための実験軌道480mを敷設した。1977年から1995年までは、宮崎県日豊本線沿いに建設された宮崎実験線を使用。1997年からは山梨県大月付近に建設された山梨実験線を使用している(下記のほか、リニア実験線も参照)。

宮崎実験線

  • 総距離 - 7.0km
  • 最急勾配 - 5‰
  • 最小曲線半径 - 10,000m

山梨実験線

  • 総距離 - 18.4km (先行区間、うちトンネル16.0km)
  • 最急勾配 - 40‰
  • 最小曲線半径 - 8,000m

最小曲線区間には、約10度のカントがつけられている。より実用的な試験のため実験センターには長さ80mのプラットホームと乗降設備が整っている。18.4kmの先行区間全行程を500km/hで走行したとすると2分程度で終端まで達してしまうので、長大編成車両に対応するため18.4kmから42.8kmに延伸する。

変電所は現在実験センターに隣接して設置されているが、延伸後は2か所となる予定である。

歴史

  • 1962年日本国有鉄道(国鉄)の鉄道技術研究所で次世代高速鉄道に関する基礎研究が始まる。基本目標として、最高速度500km/hで東京大阪間を1時間で結ぶことができるものとした。磁気浮上リニアモータ方式以外にも、空気浮上、車輪支持のリニアモータも検討された。
  • 1960年代に、アメリカのブルックヘブン国立研究所から超電導電磁石によるEDS浮上が提案されていた。これを受けて1969年、超電導を使った電磁石による磁気浮上が研究テーマとして提案される。1970年、超電導電磁石方式の開発が公表される。翌年には基礎実験装置にて効果確認がなされ、1972年には4人乗りの実験車両ML100が試作される。鉄道開業100周年を記念して行われた鉄道総合技術研究所の一般公開にて、ML100による公開実験も行われた。
  • 1974年、宮崎実験線の工事開始が決定。1977年、当時1.3kmの宮崎の実験線で、ML500を使用した本格的な試験走行実験が開始される。
  • 1979年、宮崎実験線を7kmに延長し、同年12月には無人ではあるが517km/hの世界最高記録を樹立する。
  • 1980年、U字の軌道に改造した宮崎実験線においてMLU001による走行実験が始まる。1986年には3両編成で352.4km/hを達成。翌1987年には2両編成で無人405.3km/h、有人で400.8km/hの最高速度を達成する。
  • 1988年、JR東京駅 八重州北口コンコース 及び 日本デザイン学会春期大会にて手銭正道、戸谷毅史、福田哲夫、木村一男、松本哲夫、佐藤延夫によるリニアエクスプレスMLUOOX1のデザインが発表される。
  • 1990年、山梨実験線の工事が始まる。
  • 1991年、MLU002が実験中に火災を起し、焼失。暫定的にML001を改造し開発が続けられる。1993年にMLU002Nによる実験を始め、1994年には無人で431km/hを、1995年1月26日にMLU002Nが有人で411km/hをマークする。
  • 1997年4月3日、山梨実験線でMLX01による実験走行が開始し、5月30日から浮上走行が始まった。同年の12月12日には有人走行で531km/hを、12月24日には無人走行で設計速度である550km/hを記録(当時世界最高)。
  • 1999年11月にすれ違い実験で、相対速度1003km/hを記録。
  • 2003年、JR東海の葛西社長(当時)は、技術陣を前に最高速度700km/hを目指せと喝破した。同年12月2日、3両編成車両で581km/hの世界最高をマークする(MLX01)。
  • 2004年11月16日の高速すれ違い試験で、これまでの最高記録である相対速度1015km/hを更新し、相対速度1026km/hを記録。
  • 2005年3月11日に、超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会により「実用化の基盤技術は確立した」と評価される。同年11月22日、新開発の高温超電導電磁石(ビスマス系)による走行実験が開始され、同日中に501km/hでの走行を達成した。
  • 2007年1月23日、国土交通大臣により、山梨実験線の設備更新及び延伸が承認される。

実用化への動き

2005年に、すでに国土交通省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会で「実用化の基盤技術は確立した」と評価される段階にある。

しかし、長年のマグレブの研究・開発では技術面の他に資金獲得の面でも苦労が多かったといわれている。このため、マスコミの話題になりやすい最高速度樹立を目的とした実験走行をわざと予算案作成の時期である12月に行うなどの工夫をしていたという。

田中角栄の『日本列島改造論』の影響で、日本各地に新幹線網の整備が叫ばれるようになると、整備新幹線とは別に第二東海道新幹線としてマグレブを導入しようという話が先行していた。その後のオイルショック国鉄分割民営化を経て、中央新幹線でのマグレブ導入が具体的に語られるようになった。中央新幹線は元々新幹線方式での整備計画であったが、これと区別するために中央リニア新幹線と呼ばれるようになった。一方で、地方自治体でもマグレブ導入に積極的アピールをする所が増えた。

1980年代後半に実用化試験のための新規実験線建設では自治体が名乗りをあげて誘致活動が活発化した。中央リニア新幹線で東京まで約20分で移動可能となる山梨県を始め、札幌新千歳空港の間への導入を求めた北海道大宮(現・さいたま市)と成田空港の間への導入を提案した埼玉県、日本海新幹線用に長岡上越間の提案をした新潟県、引き続き日向宮崎での拡張を訴えた宮崎県の5ヶ所が立候補した。結局は、中央リニア新幹線ルートを持ち有力政治家の金丸信がいた山梨に誘致されることとなった。

2000年には事実上、中央リニア新幹線建設のためともいわれる大深度地下の公共利用使用に関する特別措置法が成立する。さらに中央新幹線ルートは日本有数の山岳地帯を通るためかなりの部分がトンネル区間となる。山梨実験線も当初42.8kmが予定されていたが、そのうちの先行区間約18.4kmを暫定建設し使用している。残り区間については2006年4月にJR東海が約3,550億円を負担して整備すると発表した。

2003年4月に公表した国土交通省の中央リニア新幹線基本スキーム検討会議の試算では、建設費が7.7から9.2兆円、車両製造に6000億から7000億円の費用がかかるとした。また中央リニア新幹線が通るルートの理由として予想される東海地震の被害回避のためと語られるが、第二東名高速道路新名神高速道路と同時に、土地や基礎部を共有して建設すれば大幅にコストを小さくして建設できるとする少数意見も存在する[要出典]

どちらにしろ、「自民党の交通部会の先生方が、凍結状態にある整備新幹線を全部完成させるまでは、中央新幹線などビタ一文たりとも予算をつけさせない」(引用、『ON BUSINESS 2004年1月号』- 文藝春秋)というのが現状で、今後少子高齢化が急速に進み公共事業の予算の大幅な削減が続くと予想される日本で政府主導の実用化はほぼ不可能という見方が強い。

一方、読売新聞サイトに2007年3月19日掲載された、JR東海の葛西敬之会長へのインタビュー記事では、2016年度までに山梨実験線残り区間を整備後、実用化のための技術的な確認を行って、実用化はさらに10年以上先になるとしている。この記事では、東海道新幹線の利益をリニア新幹線建設につぎ込むことも表明しており、国や自治体に大きく頼らずにJR東海が主導となって、リニア新幹線の建設を進める意向が示されている。

2007年4月26日、JR東海の松本正之社長は、2025年を目標に中央リニア新幹線構想のうち首都圏~中京圏間を先行して営業運転を開始することを表明した。既存の山梨実験線(延伸部分を含む)はルートの一部に組み込まれる予定だが、それ以外の具体的な工事計画、ルート及び国との費用分担などは今後検討するとしている。

2007年12月25日、JR東海は取締役会にて中央リニア新幹線の建設を自己負担で進める方針を決定した。路線長を290キロメートルと想定した場合の建設費用は5兆1千億円であり「安定配当を維持しながら自社で投資費用をまかなえる」としている。

関連項目

参考文献

ウィキメディア・コモンズ
  • 『磁気浮上鉄道の技術』- 正田英介ら、オーム社
  • 『交通関係エネルギー要覧(2000)』- 国土交通省

外部リンク


磁気浮上式鉄道
磁気浮上方式
リニアモータ方式
電磁吸引方式 電磁誘導方式
支持・案内分離式 支持・案内兼用式
地上一次リニア同期モータ トランスラピッド (TR-05~、独)
M-Bahn (旧西独)
JR式マグレブ (日)
EET (旧西独)
車上一次リニア誘導モータ KOMET(旧西独)
EML (日)
HSST(日)
バーミンガムピープルムーバ (英)
トランスラピッド (TR-02、旧西独)
推進方式未定
(リニアモータも可能)
インダクトラック (米)

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