日本酒 とは?ページ内リンク ↓ウィキペディア(Wikipedia)記事 ↓Yahoo!知恵袋日本酒(にほんしゅ)は、米を発酵させて作る日本の伝統的なアルコール飲料の一つである。日本の酒税法上では清酒(せいしゅ)、日本では、一般には単に酒(さけ)またはお酒(おさけ)、日本古語では酒々(ささ)、僧侶の隠語で般若湯(はんにゃとう)、現代の学生言葉ではポン酒(ぽんしゅ)などと呼ばれる。 出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』 関連商品
尾瀬 あきら /
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日本酒(にほんしゅ)は、米を発酵させて作る日本の伝統的なアルコール飲料の一つである。日本の酒税法上では清酒(せいしゅ)、日本では、一般には単に酒(さけ)またはお酒(おさけ)、日本古語では酒々(ささ)、僧侶の隠語で般若湯(はんにゃとう)、現代の学生言葉ではポン酒(ぽんしゅ)などと呼ばれる。
約5℃から約60℃まで幅広い飲用温度帯がある(参照:#温度の表現(飲用温度))。同じアルコール飲料を同じ土地で異なった温度で味わうのを常としているのは、世界的に見て日本酒だけである。 料理で魚介類の臭み消しや香り付けなどの調味料としても使用される。
近年、日本国内での消費は減退傾向にある一方、アメリカ・フランスを中心とした海外市場では日本酒、とくに吟醸酒の消費が拡大しており、「sake」として知られている。(参照:「日本酒の歴史」- 昭和時代以降)
目次
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日本酒の歴史を参照。
日本酒の主な原料は、米と水と麹(米麹)であるが、それ以外にも酵母、乳酸菌など多くのものに支えられて日本酒が醸造されるので、広義にはそれらすべてを「日本酒の原料」と呼ぶこともある。専門的には、香味の調整に使われる「醸造アルコール」「酸味料」「調味料」「アミノ酸」「糖類」などは副原料と呼んで区別する。
用途によって、麹米(こうじまい)用と掛け米(かけまい)用の2種類がある。
麹米には通常酒米(酒造好適米)が使われる。掛け米には、全部または一部に一般米(うるち米)が使われるが、特定名称酒の場合、酒米のみが使われることが多い。普通酒は麹米、掛け米ともにすべて一般米で造られるのがほとんどである。
しかし、一般米からも高い評価を得る酒が造られており、高級酒となるとかつて山田錦一辺倒の傾向すらあった原料米の選び方や使い方も、近年は新種の開発などにより変化が著しい。詳しくは「酒米」参照。
水は日本酒の80%を占める成分で、品質を左右する大きな要因となる。水源はほとんどが伏流水や地下水などの井戸水である。条件が良い所では、これらを水源とする水道水が使われることもあるが、醸造所によって専用の水源を確保することが多い。都市部の醸造所などでは、水質の悪化のために遠隔地から水を輸送したり、良質な水源を求めて移転することもある。酒造りに使われる水は、仕込み水はもちろんのこと、瓶やバケツを洗う水まで酒造用水である。
また、蔵元によっては仕込み水そのものを商品として販売しており、その水が好評をもって消費者に受け入れられている。
水の硬度は、酒の味に影響する要素の一つである。日本の日常生活では、硬度の測定にアメリカ硬度を用いているが、醸造業界では長らくドイツ硬度を用いてきた。最近はアメリカ硬度へ移行する兆しも見受けられる。
造られる酒の味は、おおざっぱに言えば、軟水で造ればソフトな酒、硬水で造ればハードな酒になる。理由は、醸造過程で硬水を使用すると、ミネラルにより酵母の働きが活発になり、アルコール発酵すなわち糖の分解が速く進み、逆に軟水を使用するとミネラルが少ないため酵母の働きが低調になり発酵がなかなか進まないからである。
江戸時代以来、高品質な酒を産出してきた灘では宮水と呼ばれる硬水が使用されていた。一方、1897年(明治30年)には広島県の三浦仙三郎により軟水醸造法が開発された。かつては、硬水が酒造用水としてもてはやされていたが、軟水で醸した酒の味わいが現代人の味覚に合っているとして、近年では軟水も見直されている傾向もある。
古来から酒蔵は、川の近くに多い。これは、酒造用水として川の伏流水を汲み上げることによるもの。水は、酒の原材料のなかで唯一、表示義務の対象とされていない。したがって、原料水が、井戸水であるか水道水であるかを明らかにする必要は無い。ただし、酒造用水に課せられている水質基準は、水道水などと比べるとはるかに厳格である。酒蔵は、使用する水を事前にそれぞれの都道府県の醸造試験所、食品試験所、酒造指導機関などに送って監査を受けなくてはならない。
監査は以下のような項目で行なわれる。
中国大陸とは違い、日本の水は各地によって小差はあるもののほとんどが中硬水であり、香味を損ねる鉄分やマンガンの含有量が少ないので、醸造に適していると言える。太平洋戦争前に満州へ渡り、在留日本人のために当地で日本酒を造ろうとした醸造業者たちが利用できる水を見つけるのに苦労したという話が多い。
なお、発酵、および麹菌や酵母菌の繁殖を促進するのに有効なだけの微量のカリウム・マグネシウム・燐酸については、成分調整として添加することができる。
酒造りに用いられる酒造用水は、以下のように分類される。
杜氏や蔵人の日常生活(食事や洗面など)には、一般人のそれと同じく水道水が用いられる。なお、興味深いことに、蔵人たちが入る風呂には酒造用水を用いる酒蔵が多い。すでにその段階から「仕込み」が始まっているとの酒蔵の考えによるものであり、縁起かつぎとして行っている。
日本酒に用いる麹は、蒸した米に麹菌というコウジカビの胞子をふりかけて育てたものであり、米麹(こめこうじ)ともいう。これが米のデンプンをブドウ糖に変える、すなわち糖化の働きをする。
穀物である米は、主成分が多糖類であるデンプンであり、そのままでは酵母がエネルギー源として利用できないので、麹の働きによって分子量の小さな糖へと分解せねばならない。言いかえれば、酵母がデンプンから直接アルコール発酵を行うことはできないので、アルコールが生成されるには酵母が発酵を始められるように、いわば下ごしらえとしてデンプンが糖化されなければならない。その役割を担うのが、日本酒の場合は米麹である。米麹は、コウジカビが生成するデンプンの分解酵素であるα-アミラーゼやグルコアミラーゼを含み、これらの働きによって糖化が行われる。米麹は、ほかにタンパク質の分解酵素も含んでおり、分解によって生じたアミノ酸やペプチドは、酵母の生育や完成した酒の風味に影響する(参照:#麹造り)。
洋酒では、ワインに代表されるように、原料であるブドウ果汁の中にすでにブドウ糖が含まれているので、わざわざこうした糖化の工程が要らず、そのため単発酵文化圏となった。東洋においては、日本酒だけでなく、他の酒類や味噌、味醂、醤油など多くの食品に麹が使われ、それが食文化的に複発酵文化圏、カビ文化圏などとも呼ばれるゆえんともなっている。これは東南アジア~東アジアの中高温湿潤地帯という気候上の特性から可能であった醸造法であり、微生物としての「カビ」の効果を利用したものである。
東洋で使われる麹菌には数々の種類があり、焼酎には白麹・黒麹(黒麹菌)・黄麹、泡盛には黒麹、紹興酒には赤麹が用いられるのが通常だが、日本酒の場合は味噌、味醂、醤油と同じく黄麹(きこうじ)(黄麹菌、黄色麹菌)が用いられる。ただし、「黄色」と言われるわりには、実際の色は緑や黄緑に近い。
また形状から分類すると、日本で用いられる麹は肉眼で見るかぎり米粒そのままの形をしているため、散麹(ばらこうじ)と呼ばれる。それに対して、中国など他の東洋諸国で用いられる麹は、餅麹(もちこうじ)と呼ばれ、原料となる米・麦など穀物の粉に水を加えて練り固めたものに、自然界に存在するクモノスカビ・ケカビの胞子が付着・繁殖してできるものである。
主原料ではないが、日本酒造りの大きな要素であるため、ここに記す。詳細は清酒酵母を参照。
酵母とは、生物学的には真菌類に属する単細胞生物である。酒造りにおいては、通常は出芽酵母を指す。これも何十万を超える種類が自然界に広く存在しており、それぞれ異なった資質をもっている。この酵母の多様性が酒の味や香りや質を決定づける重要な鍵となる。また多種多様な酵母のなかで日本酒の醸造に用いられる酵母を清酒酵母といい、種は80%以上がSaccharomyces cerevisiae(出芽酵母)である。
近代以前は、麹と水を合わせる過程において空気中に自然に存在する酵母を取り込んだり、酒蔵に棲みついた「家つき酵母」もしくは「蔵つき酵母」に頼っていた。その時々の運任せで、科学的再現性に欠けており、醸造される酒は品質が安定しなかった。
明治時代になると微生物学の導入によって有用な菌株の分離と養育が行われ、それが配布されることによって品質の安定と向上が図られた。 1911年(明治44年)第1回全国新酒鑑評会が開かれると、日本醸造協会が全国レベルで有用な酵母を収集するようになり、鑑評会で1位となるなどして客観的に優秀と評価された酵母を採取し、純粋培養して頒布した。こうして頒布された酵母には、日本醸造協会にちなんで「協会n号」(nには番号が入る)という名がつけられた。このような酵母を協会系酵母、または協会酵母という。アルコール発酵時に二酸化炭素の泡を出す泡あり酵母と、出さない泡なし酵母に大別される。
もともとの日本酒は、米のもつ地味な香りだけで、いわゆるワインのようなフルーティーな香りは無い。香りをもつようになった吟醸酒を誕生させるのに大きな役割を果たしたのは、協会系酵母のなかの協会7号と協会9号であった。
1980年代に吟醸酒が消費者層に広く受け入れられると、協会系酵母の他にも、少酸性酵母、高エステル生成酵母、リンゴ酸高生産性多酸酵母といった高い香りを出す酵母が多数つくられ、今も大メーカーやバイオ研究所、大学などでさまざまな酵母がつくられている。 1990年代以降は、それぞれ開発地の地名を冠する静岡酵母、山形酵母、秋田酵母、福島酵母なども高く評価されるようになり、最近では、アルプス酵母に代表されるカプロン酸エチル高生産性酵母や、東京農業大学がなでしこ、ベコニア、ツルバラの花から分離した花酵母などが、強い吟醸香を引き出すのに注目を集めている。
しかし、日本酒における吟醸香は、ちょうど人が香水をやたらにつければ逆効果であるのに似て、あまり強すぎれば酒の味を損なう。そこで、強い吟醸香を出す酵母は蔵元に敬遠される一面もある。そういう酵母は、他の酵母とブレンドしたり、鑑評会への出品酒だけに使ったりと、まだ使い方が模索されている途上にあるといってよい。
自然の乳酸菌を用いる場合もあるが、多くの酒では添加する。酵母と同じように、日本醸造協会の「醸造用乳酸」もある。乳酸菌によって生産される乳酸は、他の雑菌が繁殖しないようにするために、とくに仕込みの初期に重要である。また、乳酸を始めとする酸が、酒に“腰”を与える。もし酸が全くなければ、酒はただ甘いだけのアルコール液になってしまう。酒造りでは、ほどよく酸を出すことも重要である。
正式には副原料に区分されるもの。
<ラベルに表示される項目>
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日本酒はビールやワインとおなじく醸造酒に分類され、原料を発酵させてアルコールを得る。しかし、日本酒やビールはワインと違い、原料に糖分を含まないため、糖化という過程が必要である。 ビールの場合は、完全に麦汁を糖化させた後に発酵させるが、日本酒は糖化と発酵を並行して行う工程があることが大きな特徴である。並行複発酵と呼ばれるこの日本酒独特の醸造方法が、他の醸造酒に比べて高いアルコール度数を得ることができる要因になっている。
日本酒は、次の過程を経て醸造される。
玄米から糠・胚芽を取り除き、あわせて胚乳を削る。削られた割合は精米歩合によって表わされる。
米に含まれる蛋白質・脂肪は、米粒の外側に多く存在する。醸造の過程において、蛋白質・脂肪は雑味の原因となるため、米が砕けないよう慎重に削り落とされ、それにより洗練された味を引き出すことができる。その反面、精米歩合が高くなればなるほど米の品種の個性が生かしにくくなり、発酵を促すミネラル分やビタミン類も失われるので、後の工程での高度な技術が要求されることになる。
精米の速度が速すぎると、米が熱をもって変質したり、砕けて使い物にならなくなるので、細心の注意をもってゆっくり行なわなくてはならない。吟醸、大吟醸となると、削りこむ部分が大きいだけでなく、そのぶん対象物が小さくなって神経も使うので、精米に要する時間は丸二日を超えることもある。
1930年(昭和5年)ごろ以降は縦型精米機の出現により、より高度で迅速な精米作業が可能になり、ひいてはのちの吟醸酒の大量生産を可能にした(参照:吟醸酒の誕生)。最近ではこの縦型精米機をコンピュータで制御して精米している大メーカーもある。
精米後の白米、分け後の酒母、出麹後の麹を次の工程で使用されるまで放置すること。
精米された米はかなりの摩擦熱を帯びている。精米歩合が高く、精米時間が長ければ長いほど、帯びる熱量も大きくなる。そのままでは次の工程へ進むには米の質が安定していない(杜氏や蔵人の言葉では「米がおちついていない」)ため、袋に入れて倉庫のなかでしばらく冷ますことになる。また、摩擦熱によって蒸発した水分を元に戻す。 これを放冷(ほうれい)、また杜氏・蔵人の言葉では枯らし(からし)という。「しばらく」と言っても数時間単位で済む作業ではなく、摩擦熱が放散しきって完全に米が落ち着くまで通常3週間から4週間はかかる。
精米された米は、精米の過程で表面に付いた糠・米くずを徹底的に除去される。これが洗米(せんまい)である。
普通酒を造る米などは、機械で一度に大量に洗米される。他方、高級酒を造る米は、手作業でおよそ10kgぐらいずつ、5℃前後の冷水で、流れる水圧を利用して少しずつ洗われる。洗っている間にも米は必要な水分を吸収しはじめており、「第二の精米作業」と言われるほどに、細心の注意を払う工程である。こうして洗われた米は浸漬へ回される。
洗米された米は、水につけられ、水分を吸わされる。これを浸漬(しんせき、若しくはしんし)という。
浸漬は、のちのち蒸しあがった米にムラができないように、米の粒全般に水分を行き渡らせるために施される工程である。水が、米粒の外側から、中心部の心白(杜氏蔵人言葉では「目んたま」)と呼ばれるデンプン質の多い部分へ浸透していくと、米粒が文字通り透き通ってくる。米の搗(つ)き方、その日の天候、気温、湿度、水温などさまざまな条件によって、浸漬に必要な時間は精緻に異なる。冬の厳寒のさなかの手仕事である。
このとき、米にどれだけ水を吸わせるかによって、できあがりの酒の味が著しく違ってくる。米の品種や、目指す酒質によって、浸漬時間も数分から数時間と幅広い。精米歩合が高い米ほど、その違いが大きく結果を左右するので、高級酒の場合はストップウォッチを使って秒単位まで厳密に浸漬時間を管理する。米は水からあげた後もしばらく吸水しつづけるので、その時間も計算に入れた上で浸漬時間は判断される。
なお、できあがりの酒質のコンセプトによっては、意図的に途中で水から上げるなど、ある一定の時間だけ米に吸水させる。これを限定吸水(げんていきゅうすい)という。
浸漬を経た米は広げて、湿度を保たせる。このあいだも米は水分を吸収し続ける。
その後、麹の酵素が米のデンプンを分解しやすくさせるために、米を蒸す。この工程を正式には蒸きょう(じょうきょう:「きょう」は「食へんに強」)、もしくは杜氏蔵人言葉で蒸しという。普通酒などでは自動蒸米機(じどうじょうまいき)という機械で、高級酒などでは和釜に載せた甑(こしき)という大きな蒸籠(せいろ)に移して、約1時間ほど乾燥蒸気で蒸す。
蒸しあがった米は、「内柔外剛」といって、外側がパサパサとしていて内側が柔らかいのがよいとされている。外側が溶けていると、コウジカビの定着の前に腐敗が始まる恐れがあり、また、内側に芯が残っていると、米で一番良質のデンプン質を含んだ部分が、糖化・発酵しない可能性があるからである。
なお、和釜から甑を外すことを甑倒し(こしきだおし)という。それは単に蒸しの作業が終わることだけでなく、杜氏や蔵人たちにとっては気の抜けない酒造りの季節が終わり、ほっと一息つく日の到来をも意味する。
麹とは、蒸した米に麹菌というコウジカビの胞子をふりかけて育てたもので、米のデンプン質をブドウ糖へ変える糖化の働きをする(詳しくは麹参照)。麹造りは正式には製麹(せいぎく)という。
口噛み製法で醸されていた原初期の日本酒をのぞいて、奈良時代の初めにはすでに麹を用いた製法が確立していたと考えられる。以来、永らく麹造りは、酒造りの工程に占める重要性と、味噌や醤油など他の食品への供給需要から、酒屋業とは別個の専門職として室町時代まで営まれてきたのだが、1444年の文安の麹騒動によって酒屋業の一部へと武力で吸収合併された(参照:日本酒の歴史 - 室町時代)。
現在、たいてい酒蔵には麹室(こうじむろ)と呼ばれる特別の部屋があり、そこで麹造りが行なわれている。床暖房やエアコンなどで温度は30℃近く、湿度は60%以下に保たれている。温度が高いのは、そうしないと黄麹菌が培養されないからであり、また湿度に関しては、それ以上高いと黄麹菌以外のカビや雑菌が繁殖してしまうからである。入室には全身の消毒が必要で、関係者以外は入れない。それに加え、室外から雑菌が入り込まないように二重扉、密閉窓、断熱壁など、かなりの資本をかけて念入りに造られている。よく「麹室は酒蔵の財産」と言われる。
「麹」の項に詳しく述べられているように、麹からは糖化作用のためのデンプン分解酵素のほか、タンパク質分解酵素なども出ており、これらが蒸し米を溶かし、なおかつ酒質や酒味を決めていく。あまり酵素が出すぎると目指す酒質にならないため、米の溶け具合がちょうどよいところで止まるように麹を造る必要がある。
それを見極めるのに着目されるのが、米のところどころに生じる破精(はぜ)である。ちょうど植物が土中へ根を生やすように、酵母が蒸米の中へ菌糸を伸ばしていくことを破精込み(はぜこみ)といい、その態様を破精込み具合(はぜこみぐあい)という。破精込み具合によって麹は次のように分類される。
杜氏や蔵人のあいだではよく「一、麹。二、酛(もと)。三、造り。」と言われる。「よい麹ができれば酒は七割できたも同然」という杜氏や蔵人もいるくらいで、酒造りの根本として重要視される。
目安としては蒸し米30kgにつき約1坪のスペースが必要で、また大吟醸酒などでは蒸し米100kg当たりに振りかける黄麹菌は5gほどである。
目指す酒質によって、麹造りには以下のような方法がある。
蓋麹法(ふたこうじほう)は、主に吟醸酒かそれ以上の高級酒のための方法であり、麹造りに要する時間は丸2日以上、だいたい50時間で、おおかた以下のような順番で作業がおこなわれる。
箱麹法(はここうじほう)は、蓋麹法から「3. 盛り」以降を簡略化する手法で、普通酒を中心とした酒質に用いられる。麹蓋を大きくしたような麹箱をつかって米を小分けするが、大きい分だけ一度に処理できる米の量が増え、ひいては手間やコストの低減化につながる。
床麹法(とここうじほう)は、麹蓋や麹箱を用いずに、麹床(こうじどこ)などと呼ばれる、米に黄麹を振りかける台で米の熱を放散させて造る方法である。普通酒を中心とした酒質に用いられる。
機械製麹法(きかいせいぎくほう)は、機械を用いて麹を大量生産できる方法。手間がかからず生産コストは抑えられるが、できる酒質には限界があるので、高級酒には適さないとされる。普通酒を中心とした酒質に用いられる。
酵母を増やす行程のこと。杜氏・蔵人言葉では「酛立て」(もとだて)という。
酵母にはブドウ糖をアルコールに変える働き、すなわち発酵作用があるものの、酒蔵で扱うような大量の米を発酵させるためには、微生物である酵母が一匹や二匹ではまったく不十分で、米の量に見合っただけの何百億、何千億匹もの酵母が必要となる。だが、じっさいの酵母の数を数える単位は匹ではなくcellという。
こうした状況のなかで酒蔵では、アンプルに入っている少量の協会系酵母を特定の環境で大量に育てることになる。このように大量に培養されたものを酒母(しゅぼ / もと)または酛(もと)という。
作業としては、まず酛桶(もとおけ)と呼ばれる高さ1mほどの桶もしくはタンクに、麹と冷たい水を入れ、それらをよく混ぜる。すると水麹(みずこうじ)と呼ばれる状態のものができあがる。酛桶は、最近では高品質のステンレス鋼のものが多く、どうみても「タンク」といった風体だが、醸造器としてはあくまでも「酛桶」という。
そのあと水麹に醸造用乳酸と、採用すると決めた酵母を少量だけ入れる。採用する酵母は、多種多様な清酒酵母から、造り手が目指す酒質に適すると考えるものが通常は一種類だけ選ばれるが、その酵母があまりにも強い特性を持つ場合などには、それを緩和するためにもう一種類の酵母をブレンドして入れることも多い。
上記のものに蒸し米を加えると酒母造りの仕込みは完成する。あとは製法によって2週間から1ヶ月待つと、仕込まれた桶のなかで酵母が大量に培養され酒母すなわち酛の完成となる。
酒母造りの場所は、酒母室(しゅぼしつ)もしくは酛場(もとば)と呼ばれ、雑菌や野生酵母が入り込まないように室温は5℃ぐらいに保たれている。しかし麹室に比べると管理の厳重さを必要としないので、酒蔵によっては見学者を入れてくれるところもある。酒母室のなかでは、酵母が発酵する小さな独特の音が響いている。
酒母造りの際には、タンクの蓋は開け放しの状態になるから、空気中からタンク内にたくさんの雑菌や野生酵母が容易に入り込んでくる。そのため硝酸還元菌や乳酸菌を加え、乳酸を生成させることによって雑菌や野生酵母を死滅させ駆逐することが必要となる。この乳酸を、どのように加えるかによって、酒母造りは大きく生酛系(きもとけい)と速醸系(そくじょうけい)の2つに分類される。
生酛系(きもとけい)の酒母造りは現在大きく生酛(きもと)と山廃酛(やまはいもと)に分けられる。
生酛(きもと)とは、現在でも用いられる中で最も古来から続く製法で、乳酸菌を自然から取り込み、乳酸を作らせ、雑菌や野生酵母を駆逐するものである。所要期間は約1ヶ月。所要期間が長いのは、工程が多く手間がかかるのと、醗酵段階も完全醗酵させるからである。しかし、腐造や酸敗のリスクが大きかったことから明治42年(1909年)に国立醸造試験所(現在の独立行政法人酒類総合研究所)によって山廃酛が開発された。現在でも時間や労力がかかるので敬遠される傾向にあるが、成功すればしっかりとした酒質が製成されるため、伝統の復活のために取り組んでいる酒蔵も増えてきている。工程の流れは以下の通り。
米、麹、水を混ぜる > 山卸 > 温度管理 > 酵母添加 > 温度管理 > 酒母完成
山廃酛(やまはいもと)とは、生酛系に属する仕込み方の一つで山卸廃止酛(やまおろしはいしもと)の略である。この方法で醸造した酒のことを 山廃仕込み(やまはいしこみ / -じこみ)あるいは単に山廃(やまはい)という。おおざっぱは言えば、生酛から山卸を除いた工程の流れとなるが、単に山卸を省略したものではなく、関連するその他の細部の作業もいろいろ異なる。詳しくは「山廃仕込み」「生酛・山廃・速醸酛の関係」参照。
速醸系(そくじょうけい)では、乳酸を人工的にあらかじめ加える、近代的な製法。明治43年(1910年)に考案された。仕込み水に醸造用の乳酸を加え、じゅうぶんに混ぜ合わせた上で、掛け米と麹を投入して行なわれる。速醸酛(そくじょうもと)とも呼ばれる。所要期間は約2週間。現在造られている日本酒のほとんどは、速醸系である。工程は以下のとおり。
米、麹、水、乳酸を混ぜる > 酵母添加 > 温度管理 > 酒母完成
醪(もろみ)とは、仕込みに用いるタンクのなかで酒母、麹、蒸米が一体化した、白く濁って泡立ちのある粘度の高い液体のことであるが、学問的・専門的にではなく、あくまでも一般的理解のためという前提で補足すると、日本酒の製法という文脈に限っては、
としてほぼ同意に使われることが多い。
したがってこの醪造りも、単に「造り」と呼ばれる。「一に麹、二に酛、三に造り」というときの「造り」はこれを意味している。またこの造りをおこなう場所を仕込み場(しこみば)という。現在の仕込み場は、たいてい温度センサーのとりつけられた3t仕込みタンクが並んでいる。
醪造りの工程においては、酵母のはたらきでもろみがアルコールを生成すると同時に、麹によってデンプンが糖に変わる。この同時並行的な変化が日本酒に特徴的な並行複発酵である。
また仕込むときに三回に分けて蒸米と麹を加える。これが室町時代の記録『御酒之日記』にもすでに記載されている段仕込みもしくは三段仕込みである。
この方法により酵母が活性を失わずに発酵を進めるため、醪造りの最後にはアルコール度数20度を超えるアルコールが生成される。これは醸造酒としては稀に見る高いアルコール度数であり、日本酒ならではの特異な方法で、世界に誇れる技術的遺産といえる。
1回目を初添(はつぞえ 略称「添」)、踊りと呼ばれる中一日を空けて、2回目を仲添(なかぞえ 略称「仲」)、3回目を留添(とめぞえ 略称「留」)という。20~30日かけて発酵させる。
吟醸系(吟醸酒・大吟醸酒)と非吟醸系(それ以外の酒)は、この過程において以下の二つの点で造り方が分かれる。
温度計もセンサーもなかった古来から、杜氏や蔵人たちは醪(もろみ)の表面の泡立ちの様子を観察し、いくつかの段階に区分けすることによって、内部の発酵の進行状況を把握してきた。この醪の表面の泡立ちの状態を(泡の)状貌(じょうぼう)といい、以下のように示される。
近年、泡なし酵母が多く開発されてきたが、今日でも泡あり酵母を使った醸造では、仕込みタンクのなかで日々刻々と上記のような状貌の推移を見ることができる。
上槽の約2日前から2時間前にかけて、ゆっくりと丹念に30%程度に薄めた醸造アルコールを添加していくこと。
「アルコール添加」または略して「アル添(アルてん)」という語感から、工業的に何か不純な添加物を加えるかのようなイメージをもたれることが多い(参照:当記事内『美味しんぼ』)が、古くは江戸時代の柱焼酎という技法にさかのぼる、伝統的な工程のひとつである。次のような目的がある。