NTSC とは?ページ内リンク ↓ウィキペディア(Wikipedia)記事 ↓Yahoo!知恵袋NTSCとは、National Television System Committee(全米テレビジョン放送方式標準化委員会)の略称であり、同委員会が策定したアナログテレビジョン放送標準方式、特に1953年に定められたカラーテレビジョン放送方式の規格も、この名称で呼ばれている。 出典: 『ウィキペディア(Wikipedia)』 NTSC 出典: 『はてなダイアリー』 関連商品
最安値(新品): ¥ 4,000
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
目次 |
1927年にフィロ・ファーンズワースがサンフランシスコで行った公開実験から始まった全電子式テレビジョンは、1933年のアイコノスコープ、さらに感度を向上させてスタジオ撮影も可能とした1938年のオルシコン撮像管開発といった要素技術の改良を受けて、1930年代末頃には研究室内での実験段階を脱し、商業放送が可能なレベルへと到達した。
しかし、当初は米国内でも各社各様のさまざまな規格が乱立する気配を見せはじめていた。そこで、RMA(Radio Manufacturers' Association〈全米無線工業会〉、後のEIA)によって1940年に組織されたのが、テレビジョン放送方式標準化委員会 (NTSC) である。標準規格策定には9か月ほどを費やし、幾度となく開かれた会合と実験の成果物は、1941年3月に推奨規格としてFCC(Federal Communications Commission〈連邦通信委員会〉)へと提出され、同5月に商業放送が承認された。後にこの白黒放送規格は、EIA(Electronic Industry Alliance〈米国電子工業会〉)によってRS-170としてまとめられている(1957年編纂)。
1940年代末から1950年代初頭にかけてカラー放送開始に向けての機運が高まった際にも、同様の規格対立が見られたため同委員会が再召集され、結果RCA社が基本原理を開発したカラー放送方式を1953年に標準方式として採択し、規格の厳格化と定義の厳密化を経て今日に至る。
ここでは、1953年にFCCによって商業放送が承認されたカラーテレビジョン放送全米標準方式(1977年に暫定規格 EIA RS-170A としてまとめられ、さらに1994年 SMPTE-170M として厳格化)について主に記す。
1940年代から放送が行われていた白黒テレビジョンとの上位互換性を維持しつつ、明るさではなく光の三原色(赤・緑・青)の動画信号を伝送するために、1950年代の市販家電製品に採用可能な様々な技術が投入されている。輝度が変化している物に関しては小さく細かい変化まで判別できるが、画像の中で色彩だけが変化している部分は、網膜に映る面積がある程度以上広くないと変化の存在自体を認識できない人間視覚の特性を利用して、そのまま送信すると白黒放送の3倍の電波帯域幅が必要になるカラー映像信号を1/3の帯域に情報圧縮している。
撮像素子から出力された、三原色(R・G・B)の強さを表す信号を、明るさを表す輝度信号(Y)と、色の座標を示す2つの色差信号(I・Q)にマトリックス変換し、輝度信号には白黒放送との互換性を持たせ、色差信号はローパスフィルターにより大幅な帯域制限(画像がぼやけるが、上述した通り人間にはこの劣化が認識できない)を行って、色副搬送波(カラーサブキャリア 約3.58MHz)で直交振幅変調をかけてクロマ信号とし、輝度信号や音声信号との相互妨害を極力発生させないような形態に合成して放送する。
各家庭の受像機では、視聴するチャンネルの放送周波数帯を選択増幅し、検波器でベースバンド映像信号に復調したものから輝度信号と色差信号を分離し、逆マトリックス変換によって三原色の強さを表す信号を復元して、カラーブラウン管(今日では液晶やプラズマディスプレイを始めとする平面表示デバイス)に動画像を表示する。
NTSC委員会の策定したカラーテレビジョン放送方式を採用している国は、アメリカ、カナダ、メキシコ、日本、台湾、韓国、フィリピン、中南米諸国の一部、太平洋諸島の一部などである。採用国数と視聴可能人口では、インドと中国も採用しているPAL方式の陣営が圧倒的に上回るが、アメリカが映像ソフトの供給大国であることから、市場における各方式の地位・重要性を単純に比較することは出来ない。
白黒テレビとの上位互換性を維持するため、
インターレース(飛び越し)走査を採用した理由は、当時唯一の実用表示デバイスであったブラウン管の特性に依る。ブラウン管においては、発光しているのは電子ビームが当たっている一点のみであり、例えば垂直走査の終わるまぎわ、画面の下部に有る走査線を描いている頃には、画面上部の領域は蛍光体の残光も消尽して暗くなってしまい、毎秒30フレーム程度の描画では視聴者にフリッカーを認識させてしまう事が分かっていた(映画が毎秒24コマなのに顕著なフリッカーを感じないのは、画面全域が同時に発光している為である)。だからといって、毎秒60フレームで走査線525本の表示を実現しようとすると、後述する通りの計算をした場合、映像信号の帯域幅が9MHz弱、放送チャンネルは10MHz幅近くもの、膨大な周波数資源を浪費してしまう。
μ秒のうち、帰線消去期間等 (0.14H+0.02H) [2]を除くと、映像表示に使える期間は約53.3μ秒となる。更に、ブラウン管のオーバースキャンにより、そのうちの90%程度しか画面に表示されていない場合を想定すると、有効表示時間の最悪値は48μ秒ほどになる。ここに最大400ラインペア、200サイクル(白線1本プラス黒線1本で2ラインペアと数えるため)を表示しようとすると、その周波数上限は
MHz となる。
=330(単位:TV本)が、放送波で送られてくる映像信号の水平解像度上限となる。そこで、搬送波周波数より低い側の側帯波も一部(搬送波周波数-750kHzまで)を送信して、直流付近の信号まで確実に伝送する残留側帯波方式とし、遮断特性はゆるやかだが安価で大量生産に向くフィルターを使えるようにした。また、変調は負極性、すなわち映像信号電圧の最も低い同期信号の底で変調波の振幅が定格出力100%になり、最も明るい白を表示する時の変調波振幅は12.5%となるよう規定されている。これは、受像機側での AGC (自動利得制御)を容易にするためである。水平走査期間63.5μ秒の間に、電波の振幅が100%になるピーク期間が確実に存在するので、そこが規定のレベルになるようAGC回路を構成すれば良い。仮にこれが正極性の変調だと、暗いシーンを映しているから電波の振幅が低いのか、電波が弱いから振幅も低いのかを区別する為に、復調後の映像信号からもフィードバックをかける回路が余計に必要になる。
といった基本諸元は変えず、水平同期周波数 fh と映像-音声搬送波周波数の差 fa が整数倍の関係になるよう変更している。
(なお、fa = 4.5MHz〈白黒放送の fh=15.750kHz に比べて0.1%の差異〉)これに伴って垂直同期周波数は60Hzから
Hzに、フレームレートも毎秒30枚から
枚へと0.1%ずつ低下するが、大部分がアナログ回路で構成されている垂直および水平偏向系にとっては製造誤差範囲内に収まる変更であり、既存の白黒テレビ受像機を改造調整することなくカラー放送の輝度信号部分を受信可能にしている。
水平同期周波数と音声キャリア周波数を整数倍の関係にしたのは、これらと色差情報を付加する為の色副搬送波の周波数 fsc とをインターリーブさせ、相互妨害が最小で済むような形で合成するためである。
ゆえに、
MHz±10Hz(
…MHzの循環小数になる)色差信号を解読しない白黒テレビ受像機では、輝度信号に加算されたクロマ信号は単なる妨害信号(ノイズ)となり、非常に細かい波状の明暗ビートとして画面に表示される。色副搬送波の周波数を水平同期周波数の
の奇数倍、映像信号帯域上限(約4.2MHz)に近い数値にしたのは、この妨害ビートが出来るだけ細かくなるよう、さらに市松模様状に規則正しく並んで、適正視聴距離[3]以遠まで離れて見ると模様が潰れて平均化されて目立たなくなるように考慮して設定された値であり、映像信号帯域の 4.2MHz からクロマ信号側帯波の帯域を0.5MHz以上確保した約3.58MHzに定められている。
被写体で反射し、ビデオカメラのレンズに入射してきた光は、ダイクロイックミラーによって赤・緑・青の波長毎に分光され、撮像管(近年はもっぱらCCDやCMOSのような平面撮像板)に焦点を結ぶ。撮像面上に投影された光学像は、光電効果もしくは微小フォトダイオードによって光の強弱を2次元平面上の電位の高低や抵抗値の高低へと変換され、水平および垂直走査によって走査線毎に分解された線順次(1次元の)電位信号として取り出されてくる。
輝度信号Yと色差信号I・Qは、この各色カメラから出力される信号にガンマ補正を施し、重み付けを行って加算する事で生成する。ブラウン管等の表示装置に使用される三原色の ISO/CIE 10527 色度図座標を
赤 x=0.670 y=0.330 緑 x=0.210 y=0.710 青 x=0.140 y=0.080
と想定し、無色の「白」を意味する信号を送出した時に受像機側で表示される光を、CIE標準光源Cの座標
白 x=0.3101 y=0.3162
に設定して、これらの色に合致させた各色カメラからの出力信号 赤:R 緑:G 青:B を0 (0IRE) 〜1 (100IRE) の範囲に正規化したとき、
Er = R0.45 Eg = G0.45 Eb = B0.45
の様にガンマ補正を行い、7.5IREのセットアップレベル(最低輝度の「黒」を規定する信号レベル)を加算
E'r = 0.925Er + 0.075 E'g = 0.925Eg + 0.075 E'b = 0.925Eb + 0.075
したものを
Y = 0.299 E'r + 0.587 E'g + 0.114 E'b I = 0.5959 E'r - 0.2746 E'g - 0.3213 E'b Q = 0.2115 E'r - 0.5227 E'g + 0.3112 E'b
というマトリクスを実現する回路で変換を行う。受像機側では上記マトリクスの逆行列に相当する変換回路で、輝度信号Yと色差信号I・Qから赤緑青の各色信号を復元し、表示装置を駆動する。
オレンジから水色の色差を表すI信号は、基準となる色副搬送波から 57°遅れた位相を持つ搬送波で平衡変調し、青紫から黄緑の色差を表すQ信号は同じく147°遅れた(I信号から更に90°遅れた)搬送波で変調をかけて加算し、クロマ信号を生成する。クロマ信号は、簡単に言えば基準となる色副搬送波との位相差が色相を、振幅が彩度を表すベクトル信号である。受信側で色差信号の復調を行う際のよりどころとなる、位相と振幅の基準信号は、水平同期パルス立ち上がり直後のブランキングレベル区間(バックポーチ)に挿入されている。このカラーバースト信号は、水平同期パルス立下り50%エッジ[4]から色副搬送波19サイクル(約5.3μ秒)後に始まる、持続時間9±1サイクルの色副搬送波で構成され、振幅は垂直・水平同期信号と等しい 40IRE p-p と規定されている。
受像機側での復調時には、カラーバースト信号と同じ位相同じ周波数に同期させた連続波発振器(多くの場合、水晶振動子が用いられる)を駆動し、各々57°と147°遅らせる移相器を通した2種類の局部発振信号を得て、映像信号から分離したクロマ信号を同期検波してI・Q信号を復元する。
を合成し、U信号は180°、V信号は90°遅れた色副搬送波で変調してクロマ信号を生成する方法を第一に挙げている。一方、I・Q信号でクロマ信号を生成する旧い1953年版規格の機器も継続使用が認められている。最終的に生成されるクロマ信号は、両者の間に大きな違いは無いが、唯一Q信号の帯域制限を行うローパスフィルターの特性だけが 0.5MHz で 6db 減衰と狭くなっている(U・VおよびI信号は1.3MHzまで減衰量2db以下、3.6MHzで20db以上)。 そのため、受像機側では新旧どちらの規格で作られた映像信号が来ても問題ないように、色差信号復調前後のフィルター特性はQ信号のそれに合わせて狭帯域 (0~0.5MHz) で実装するのが安全であると考えられている。実際、音声搬送波がクロマ信号に与える妨害ビート
約920kHzを回避するため、同時にコストダウンの目的もあって、市販受像機ではクロマ帯域のフィルターを狭帯域の物のみで済ませており、I信号を広帯域1.3MHzまで復調している例は稀有である。送出側で輝度信号Yとクロマ信号Cを合成する際は単純に加算するだけで済むが、受像機側でのY/C分離は現在に至るも完全な分離法は実現されていない。以下にいくつか方式を挙げるが、それぞれに利点・欠点を持つ。
倍であり、言い換えれば1本の走査線は色副搬送波227.5サイクル分の時間で描かれるということである。走査線上のある1点に注目すると、その直上直下の走査線の同じ水平位置では色副搬送波は半サイクルずれ、位相が反転している。仮に、1色で塗りつぶされている画像を撮影してNTSCの映像信号に変換したとき、生成されるクロマ信号の振幅は一定になるが、色副搬送波との位相差も一定になるので、当該画像のクロマ信号は、直上直下の走査線と比較すると同じ水平位置では位相だけが反転していることになる。
自然画像を走査線で分解して映像信号にしたものを仔細に分析すると、直上直下の走査線ではあまり大きく内容が変わらず、同じ水平位置では輝度・彩度・色相とも似通っている(ライン相関性が高い)場合が多い。そこで、映像信号を正確に走査線1本分の時間(
μ秒)遅らせる遅延回路を通した信号と現在送られてきている信号とを足し合わせると、 画面のほとんどの領域でクロマ信号は打ち消しあい、残った輝度信号だけが得られる。逆に過去の信号との差分を取ると、輝度信号は差し引きほぼゼロになり、位相が反転しているクロマ信号だけが残留する。
遅延回路を用いたこのフィルタは、遅延時間の逆数の整数倍の周波数で利得にピークができ、周波数特性グラフで見るとちょうど櫛の歯のようになっている事から、クシ形フィルタと呼ばれる。
ミリ秒)だけ映像信号を遅延できる回路を作成すれば、フレーム相関性を利用したY/C分離が可能になる。
「過去」の画面との比較を行うこのフィルターは、2次元平面のフレーム画像を時間方向の次元で演算処理する事から、3次元クシ形フィルタと呼ばれる。
放送波への変調を行わず、NTSCベースバンド信号を同軸ケーブルで外部の機器とやり取りする場合、入出力およびケーブルのインピーダンスは75Ωとし、信号レベルを 1V p-p とするよう規定されている。信号送出側/受入側とも直流伝送が可能な設計になっていれば、ブランキングレベルを 0V 、同期信号レベル(-40IRE)を -286mV、映像信号の輝度100%(100IRE)を 714mV とするが、直流結合できない場合、もしくはどのような機器が接続されるのか確定出来ない場合は、同期信号の底のレベルもしくは水平同期信号直後のブランキング期間の電圧を、各々の機器内部で基準とする電圧に揃えるクランプ回路を受信側に設けて、限定的直流再生を行う。
接続端子の形態は、業務用機器ではインピーダンス75Ωに設計されたBNCコネクタ(通常のBNCコネクタは50Ω)と指定されているが、民生用機器ではRCAピンプラグを使用するのが一般的である。
クロマ信号は、NTSCベースバンド信号生成前の色差信号I・Q(又はU・V)の段階で最大1.3MHzの帯域制限フィルタがかけられているが、輝度信号の帯域にはNTSC規格としての上限は設けられておらず、伝送路や記録再生機器の規格や性能によってのみ制限を受ける。たとえば、放送波では 4.2MHz(水平解像度約330TV本)の帯域が確保されており、普及型家庭用VTRでは 3MHz(同、約240TV本)までの信号が録画再生可能といったように、求められる性能とそれを実現する為にかかるコストを鑑みて帯域(水平解像度に比例)上限が設定されている。なお、垂直方向の解像度が総走査線数によって一意に規定されている以上、水平解像度だけを無闇に追求する意義は薄い。
詳細は音声多重放送を参照
音声は当初モノラルのみであったが、1978年に日本の東京広域圏でFM-FM 変調によるEIAJ方式音声多重放送が始まったのを皮切りに、アメリカでは1984年にBTSC (Broadcast Television Systems Committee) が制定したAM-FM 変調方式のMTS (Multi-channel Television Sound) を、またPAL圏の西ドイツでは音声信号内にサブキャリアを挿入する前2者の様な方式ではなく、2つ目の音声搬送波を設けて、そこで第2音声(2カ国語放送の外国語音声または、ステレオ放送時の右チャンネル音声)を伝送するA2方式で1981年から音声多重放送を行っている。
放送技術関係者らは、NTSC方式を評して自嘲的に
"Never Twice Same Color"(同じ色は二度と再現できない)
"No Television Same Color"(どの家のテレビも違う色で映る)
"Never Tested Since Crist"(有史以来、技術的正当性を検証していない)
などと揶揄しているくらいである。
NTSC以後に開発されたPALでは、2つある色差信号のうちR-Y成分の極性を走査線1本毎に反転する事によって、位相歪みの影響を画面上で目立たなくする改良が加えられている。SECAMでは色差信号はFM変調されており、この種の問題は原理的に発生しない。
しかし、1950年代から1970年代には問題となっていたこの件も、送出側規格の厳密化やアンテナの指向特性向上、位相歪みを低く抑える電子回路技術の進歩、特に高性能な中間周波フィルター類の開発と量産廉価化・広範採用により次第に改善され、「受像機を設置した先々で、いちいち色相調整つまみを回して合わせ込まないと正しい色が再現できない」という煩わしさを過去のものとしている。なお、NTSCの走査線数525本に対しPALのそれは625本と多く、画面の詳細度はPAL方式の方が上回っているが、水平解像度と走査線数とフレームレートの積は、当該チャンネルの放送波が占有し消費する周波数帯域の広さと比例し、各値はトレードオフする関係にあるため、これをもって方式の優劣を語ることは出来ない。
放送電波の帯域は当該国家ないし地域住民の、言わば共有インフラ・共有財産であり、民生用途に話を限ったとしてもテレビジョン放送のみに専用が許されているわけではない。VHF帯 (30〜300MHz) の利用が始まったばかりの1940年代において、当時の16mm白黒映画フィルムと同等の解像度400ラインペア[5]程度を確保した上で、チャンネル当たりの占有帯域が6MHzで済むNTSCは、国土が広く、混信を避けつつ全国放送を行うためには多くのチャンネルを必要とするアメリカの事情を反映して開発された方式でもある。7~8MHzのチャンネル幅を必要とするPAL/SECAM方式や、14MHzもの帯域を占有して819本の走査線を描くフランス式System-Eの様に、放送チャンネル当たりの帯域を広く取ればそれだけ多くの走査線を詰め込めるが、確保できるチャンネル数はその分減少する。テレビジョン放送用のチャンネル数を増やすには、周波数が高い方向に確保するしかない(低い側の周波数領域は既に他の放送通信用途で埋まっており、数十〜数百MHz単位で連続した領域を確保するには高い周波数帯を開拓する以外に方法は無い)わけだが、周波数が高くなればなるほど、送信側受信側とも克服せねばならない技術的困難は増大する。
アメリカやその他の国々で採用されているオリジナルの RS-170A/SMPTE-170M 規格では、最低輝度の黒を表すセットアップレベルは7.5IREと規定されているが、日本では黒レベルとブランキングレベルが等しく、0IRE(=0V) となっている。両者の違いはごくわずかであり、多くの一般人はこのような差異が存在すること自体に気が付かないであろう。しかし、業務として映像に携わる人々にとっては無視できない違いであり、業務用機器では日本規格と米国規格とで製品ラインナップが別になっていたり、明示的にセットアップレベルを切り替えるスイッチが付いていたりする。
また、「輝度100%の白」を意味する信号が送られてきた時に表示する「白」の色温度も、日米で異なっている。SMPTE-170Mでは国際照明委員会 CIE 標準光源のD65(色温度約6500°Kの昼光色)を目標色にしているが、日本では明文化された規定は無いが色温度約9300°KのD93光源の色が業界標準となっており、少々派手目の絵作りが設定されている。
なお、日本の東半分(富士川および糸魚川以東)ではAC電源の周波数は米国の60Hzと異なる50Hzであるが、50Hz地域でNTSCを採用しているのはミャンマーと日本以外に例が無い。白黒時代のNTSCで、垂直同期周波数を米国の電源周波数と等しい60Hzに決定した理由は、端的に言えば1940年代の電子回路に使える増幅素子が真空管だけだったためである。当時はコンセントから取ったAC電源を直接整流して、コンデンサで平滑化しただけで回路内部のメイン電源を生成するトランスレス設計が当たり前であり、安定化されていないB電源には交流周波数と同じ周期の脈流成分が多量に含まれていた。同様にブラウン管に印加する加速電圧も安定化されていないために電子ビームの速度が変化してしまい、画面が明滅したり偏向感度が変化して画像が膨張・収縮する現象を抑えきれず、表示フィールドレートと電源周波数が等しく[6]なっていないと激しいフリッカー(ちらつき)や画面の振動を生ずる危険性があった。
もう1つ、ブラウン管の蛍光面を焼きつきから保護するために、放送を受信していない時にも水平・垂直偏向系を駆動し続ける必要があり、仮の同期信号を電源周波数の逓倍で作れるよう、総走査線数は比較的小さな奇数の積 525=3x5x5x7 となっている。
ところが、このような電源周波数に依存した設計を採ると、日本の東西で方式を分けなければならなくなってしまう。幸い、アメリカでテレビ放送が開始された1941年から、日本で開始される1953年まで十余年間の技術進歩の恩恵を受けて、内部回路用の低圧電源や電子ビーム加速用の数千ボルトの電圧を一定に保ち、また電源周波数の逓倍に頼らずとも正確な発振周波数を得られる電子回路と、それらを可能にする部品群が開発されており、東日本地域でNTSC方式の受像機を使用しても、画像に上記の様な問題を生じることは無い。
そしてこれはテレビジョン放送規格の差異ではないが、日本のFMラジオ放送では音声信号のエンファシス[7]時定数は欧州規格と同じ50μ秒を採用している。アメリカではFMラジオ放送のエンファシス時定数とテレビのそれとは同じ75μ秒であるため、テレビの音声放送周波数にチューニングダイヤルを合わせる事が出来れば(あるいは周波数変換機:コンバーターを使用すれば)、テレビの受像機が無くても音声部分だけはラジオで聞く事が出来る[8]。しかし、日本規格(50μ秒)のFMラジオ受信機で何の対策もせずに、エンファシス時定数75μ秒で放送されているTV音声を聞くと、高域が強調されて、いわゆる「キンキンした」音になってしまう。
NTSCカラー放送方式は激しい変革と急速な進化を遂げ続けている電子工業界において、50年以上もの長きにわたって第一線にとどまり続け、その間も消費者の厳しい評価に応え続けてきた規格である。しかし、放送通信のデジタル化は時代の趨勢であり、特に算術処理により動画データーを高圧縮する、MPEGを始めとした技術の実用化に伴って、衛星放送はもとより、地上波でも高精細度デジタル放送への移行が各国で進行中である。
アメリカ合衆国ではATSC (Advanced Television Standards Committee) 委員会による標準方式が策定され、地上波放送を受信し得る13インチ以上のテレビジョン装置は、全てこのATSC方式のチューナーを備えるよう義務づけている。地上波アナログ放送は2009年2月17日をもって終了するスケジュールとなっており、低所得者層向けの移行支援として、デジタル放送をNTSCベースバンド信号に変換する単機能チューナーを購入する際に使用できる40ドル分の割引クーポンを配布している。
日本においても電波産業会 (ARIB) が規定するISDB (Integrated Services Digital Broadcasting) 方式への移行が予定されている。本来無料放送である民放局の番組にまでスクランブルをかけ、その解除キーであるB-CASカードをチューナーやレコーダーに挿入しないと受信できない煩雑さや、件のB-CASカードを独占販売している私企業・株式会社ビーエス・コンディショナルアクセスシステムズが視聴者一人一人の個人情報を把握している危険性、それらを始めとする視聴者および製品購入者にとって不利益となりうる情報が、シュリンクラップ契約で覆い隠され周知されていない隠蔽体質など、批判も多く実現を危ぶむ声も聞かれるが、法律上は2011年7月24日をもって地上波アナログ放送を停波するスケジュールになっている。低所得者層への移行支援策は、現時点で具体化された物は何も無い。
その他、各国各様の方式でデジタル放送への完全移行が計画されており、スケジュールが予定通りに進行すれば、空間波で放送する方式としてのNTSCは、2010年代前半頃にその使命を終えていると予想される。しかし、個々人ないしは団体が所有するビデオテープ・ビデオディスクやゲーム機とそのソフト類を始めとするライブラリが存在し続ける限り、NTSCベースバンド信号の再生需要もまた無くなる事はない。
| |||||||||||||||||||||||||||||||||